2015年4月2日8:17
官民一体となって地域活性化を推進する「めぐりん」
“地産地消”のポイント事業としてさらなる利用拡大を見込む
「民」主導で始まった香川県の地域共通ポイントサービス「めぐりん」が、「官」との連携も強化しつつ利用範囲を拡大し、地域への貢献度を高めている。電子マネー「WAON」とのジョイントなどにより、これまで15万枚を発行し、今後、さらなる利用拡大を見込む。サイテックアイ 代表取締役社長(めぐりん事務局 事務局長)の善生憲司氏に、サービスの現状と今後について伺った。
1企業が考案したシステムを
地元商店街が導入したのが普及のきっかけに
香川県の地域共通ポイントサービス「めぐりん」が誕生したのは、もともと県内で複数の飲食店を経営していた現・めぐりん事務局長の善生憲司氏が、自社店舗にポイントカードを導入する過程で、電子マネーの「WAON」にポイントシステムを搭載することを決めたのが発端だった。
多くの利用者は、財布の中に、いずれ捨てられる運命にある使わない大量のポイントカードを格納している。しかし、1円でも入金されている電子マネーカードなら、捨てられにくいはずだ。これが善生氏が「WAON」などの非接触ICカードの活用を決めた理由だった。
「FeliCaポケット」が搭載されているカードであれば「めぐりん」のサービス機能を付加することが可能だ。加盟店を募り、まず40店舗でポイントサービス「めぐりん」をスタート。しかし利用は思うようには進まず、1年も経ったころ暗礁に乗り上げる。ちょうどそのころ、県内の兵庫町商店街の理事長が「めぐりん」に興味を持ち、商店街を挙げての導入を決定。「めぐりん」はこの時点から明確に目的を「地域コミュニティの活性化」と定め、そのための施策を次々と考案・実行していったのだ。
現在、「めぐりん」のポイントを貯めることのできる媒体は、香川大学の学生証、高松市の職員証、琴平電鉄のIruCaカード(一部)など、香川県の人口の約20%に当たる約20万枚のカードが「めぐりん」として利用できる。そのうち約8割が「WAON」の機能を併せ持つ「めぐりんWAONカード」となっている。
「WAONはイオンリテールが発行する電子マネーのため、スタート当初は地元商店街などから反発の声も聞かれました。しかしお客様の目線に立てば、地元の商店街でも郊外のシッピングセンターでも同じカードが使えたほうが便利ですし、結果としてそれが、相互集客の効果を生んだのです」(善生氏)
現在では、イオンが「めぐりん」ポイントを発行したり、共同イベントが催されることもあるなど良好な連携体制がとられており、地元商店街と大型ショッピングセンターが協力して地域活性化に取り組む全国でも有数の成功例となっている。
地域活動を通して利益が循環する
“地産地消”のポイント事業
「めぐりん」が目指しているのは、地域の利益が地域に還元される“地産地消”のポイント事業。このコンセプトへの理解が浸透するにつれ、加盟店は順調に増え、現在は高松市内を中心に約500店舗・施設に広がっている。特に最近は「半民半官」や「官」との連携が進んでいるという。
例えば地元のバスケットチーム「高松ファイブアローズ」。チームのオリジナルグッズなどが、地元の商店街で貯めたポイントで購入できる。また、ポイントを、地元の電鉄会社「ことでん」の乗車券と引き換えたり、地元のNPOに寄付することもできる。
買い物以外の非経済活動も、ポイント付与の対象となる。例えば行政と組み、高松市協働企画提案事業として、健康診断の受診や、ウォーキングの歩数に応じてポイントを付与するキャンペーンを実施。行政と連携した施策としては、ほかにも、体育館、武道館、公園といった公共施設と連携した取り組みを積極的に進めている。
「めぐりん」の収益はここ数年、右肩上がりで推移しており、昨年度は5期目にして事業は初めて黒字に転換した。善生氏は、「すでに採算ベースには乗りましたが、やり方によっては、まだ現状の10倍以上伸びるポテンシャルはあると考えています」と笑顔を見せる。
現在、1カ月間に1回以上利用するアクティブユーザーはその4分の1程度。年間のポイント発行数は約2,000万(100円で1ポイント発行が基本)、経済効果としては約20億円/年という。
「めぐりん」は「WAON」をはじめ、他サービスとの“相乗り”で提供されているケースがほとんどなため、「めぐりん」のサービスを受けられるカードを保有していながら利用に至っていない人も多く、ここに利用拡大の余地があると見ている。加盟店についても、現在の倍の1,000まで増やしたい考えだ。
今後に向けて地域共通商品券の構想もあるといい、「めぐりん」のインフラを活用した地域活性化事業はさらに広がりを見せそうである。