主要なカード決済とセキュリティ対策を一挙紹介(1)

2015年4月15日8:00

主要なカード決済とセキュリティ対策を一挙紹介(1)
●クレジットカード/ポストペイ/スマートフォン決済/デビットカード

国内でも後払いの「クレジットカード」、前払いの「プリペイドカード」、即時払いの「デビットカード」の利用シーンはさらに広がると思われる。また、実店舗やインターネットにかかわらず、さまざまな決済手段が用いられており、セキュリティ対策も重要となる。そこで、国内の主要な決済手段やセキュリティ対策について、紹介する。

国内のクレジットカード動向

クレディセゾンの2014年第2四半期決算発表資料によると、民間最終消費支出288.5兆円に占める「現金」の割合は55.1%。「クレジットカード」は13.8%となっている。これは、米国の26.7%には及ばない。

日米の個人消費に占める決済手段別シェア比較(出典:クレディセゾンの2014年第2四半期決算発表資料)
※日本:経済産業省、ニューペイメントレポート、三菱UFJリサーチ&コンサルティング、各社・各協会公表資料 等よりクレディセゾン独自推計
※米国 : NILSON REPORT

クレジットカード決済については、世界的な金融不況の影響や改正割賦販売法の影響などもあり、2008年を境に、2009年、2010年と対前年比マイナスとなったが、その後はカード会社が量よりも質を重視する展開が軌道に乗り、プラスに転じている。現状は極端な増加ではないが、2020年に向けさらなる普及を期待したところだ。

また、昨今では、インターネットや通信販売、デジタルコンテンツといったeコマース、従来、口座振替や振込みが多かった家賃、公金、医療、教育といった分野においても、クレジットが使われるようになってきた。まだまだ米国や韓国に比べると現金比率は高いが、国内でも徐々にクレジットカード決済の比率は伸びている。また、クレディセゾンやジェーシービー、三菱UFJニコス、三井住友カード、ライフカードといった企業は、プリペイドカードの展開にも力を入れている。

国内のポストペイサービス動向

(1)MasterCard PayPass/MasterPass
MasterCardは2013年6月6日、非接触決済の日本国内での本格展開にあたり、「MasterCard PayPass」(グローバルではMasterCard Contactless)を利用できるNFC対応の非接触決済端末を2013年第2四半期より3年間で全国に41万台設置する計画を発表した。MasterCard PayPassは、日常の支払いで、現金に代わり利用できるMasterCardの非接触決済手段で、同機能付きのカードや携帯電話を端末にかざすだけで支払いを完了できる。

日本においては業界に先駆けて、カード会員にとって利便性の高い支払手段を提供するため、2006年4月より複合型商業施設イクスピアリ(千葉県浦安市)でMasterCard PayPass端末が導入。また、オリエントコーポレーションやジャックスからMasterCard PayPass搭載のクレジットカードが発行されている。

さらに、MasterCardは、2013年2月25日、スペインのバルセロナで開催されたモバイル・ワールド・コングレスにて、次世代型デジタル決済サービス「MasterPass」を発表した。同サービスは、オンライン、実店舗など、どんな場所からでも、マウスでのクリックあるいは画面でのタップやタッチだけで、あらゆる種類のペイメントカードや対応するデバイスを利用して買い物を行うことができるという。

MasterPassでは、どのような場所からでも決済が可能な電子決済手段を加盟店に提供する。店頭やレジはもちろん売場通路でも、NFC、QRコード、電子タグ、モバイル機器などを使った決済が可能で、一般的なプラスチックカードにも対応するという。オンライン・ショッピングでは、配送先やカード情報を購入するたびに入力する必要がなく、シンプルな購入手続きを実現可能だ。

MasterPassのイメージ(MasterCard)

また、金融機関、加盟店、パートナー企業は、独自のウォレットサービスを展開することができる。カード情報、住所録の個人情報はクラウド上で管理され、クラウドは信頼性の高い事業体によってホスティングされるという。同ウォレットサービスは、オープンな設計を採用しており、MasterCardに加え、他社のブランドのクレジットカード、デビットカード、プリペイドカードにも対応している。

さらに、Appleが発表したiPhone 6、iPhone 6 Plus、Apple Watchでの決済を可能にする「Apple Pay」の支払いには、MaterCardが提供するマスターカード・デジタル・イネーブルメント・サービス(MDES:MasterCard Digital Enablement Service)が利用されている。Apple Payの仕組みでは、クレジットカードやデビットカードの情報をトークン化し、別の番号に置き換えて利用されるが、MasterCardでは、このトークンを生成し、スマートフォンやサーバへ書き込む機能を提供している。2015年以降は、MDESとMasterPassとの融合も考えているそうだ。

(2)Visa payWave
VisaのVisa payWaveは、Visaが開発したEMV技術を用いた非接触IC決済ソリューションであり、スピーディーな取引が可能だ。Visaでは、電子マネー等で決済することに慣れている国内において、世界共通で利用できるVisa payWaveのサービスを提供することは、同社のビジネス戦略において重要であると考えている。現状、国内における消費の中で、電子決済が占める割合は14%~15%。韓国の約65%、米国の約50%に比べると進展の余地がある。特に5,000円以下の決済は90%以上が現金決済であり、進化した電子決済に置き換えられるとしている。

Visaでは、Visa payWaveは、EMV技術を用いた高い安全性と拡張性を備えた非接触IC決済ソリューションであると自信を見せる。その上で、磁気カード等に比べ、決済をよりスマートに効率よく実現することで売り上げの増加、カード会社のビジネスの拡大に貢献できるとしている。

Visa payWaveの決済イメージ(Visa)

(3)QUICPay/J/Speedy
ジェーシービーでは、2005年4月から、後払い(ポストペイ)方式の電子マネー「QUICPay」を展開している。同社では、2011年下期からQUICPayを再強化し、JCBブランド会員への利用の訴求、利用できる加盟店の開拓を積極的に進めている。2014年9月末現在、会員数は400万5,000人、端末台数は40万2,734台となっている。

また、EMVに準拠した、非接触IC決済サービス「J/Speedy」を開発している。JCBでは、2014年7~12月に、表参道周辺の飲食店で検証を実施。2014年7月1日には、2015年中旬を目途に、日本における自社発行事業において、カードおよびモバイルにてJ/Speedyの発行を開始する予定であると発表している。

「J/Speedy」の決済イメージ(JCB)

(4)iD
NTTドコモの「iD」の会員数は2,099万、リーダライタ稼働台数は55万8,000台となっている。また、月間決済件数は2,011万件となる。直近で強化しているサービスとしては、海外のMasterCard PayPass加盟店で使える『iD/PayPass』の推進、おサイフジャケットなど、外部デバイスへの対応(おサイフケータイジャケット01に1/28より対応)となる。

iPhoneの販売によるiD利用者への対応については、「おサイフジャケット等、多様なデバイスへの対応により、お客様のご利用環境の充実を図っています」とNTTドコモでは説明する。なお、iDは2015年12月1日に10周年を迎えるそうだ。

iDは2015年12月に10年を迎えるため、「天才バカボン」をキャラクターとしたキャンペーンを2015年3月から開始

スマートフォン決済動向

近年、スマートフォンやタブレットにイヤフォンジャックやジャケット型のカードリーダーを装着して決済するソリューションが注目を集めている。「PayPal Here」、「Square」、「楽天スマートペイ」、「Coiney」などのようにイヤフォンジャック型のスマートフォン決済サービスを展開する企業は、主にSMEと呼ばれる中小規模店舗をターゲットとしている。国内の主要なカード会社としてもこれまで開拓できなかった加盟店に訴求することができるため、新たな市場を開拓できるツールとして期待しているところは多い。

また、リクルートライフスタイルの「Airレジ」、エスキュービズム・テクノロジーの「EC-Orange POS(イーシーオレンジポス)」、プラグラムの「スマレジ」、ユビレジの「ユビレジ」といった、スマートデバイスを活用したPOSシステムとの高い親和性もある。

ゼウスのスマレジを利用したスマートフォン決済のイメージ(ゼウス/プラグラム)

しかし、モバイルPOSは、持ち運んでの決済が可能になることにより、場合によっては不正利用につながる恐れもある。そのため、アクワイアリング時の加盟店審査については、従来のモバイル端末同様に厳しくする必要があるだろう。また、決済ソリューションを提供する企業にとっては、国内のカード会社との契約が求められるため、一部の参入企業が撤退を余儀なくされた事例もある。

日本クレジット協会や日本クレジットカード協会のスマートフォン決済に関してのガイドラインでは、決済端末自体のセキュリティ基準も厳しく設けられており、カード決済時の暗号化の実施や端末固有の識別も求められる。現状、国内でサービスを提供している企業の多くは、カード会社等と連携して、強固なセキュリティを確保したシステムを構築している。

また、スマートフォン決済で注目されるのは、EMV ICカード化だ。Visaは、IC化対応を行っていない会社に対しては、ライアビリティー(債務責任)を課すルール、「グローバルEMVライアビリテイシフトルール」の運用を2015年10月よりスタートする。Visaでは国内において、原則新規に設置されるEMV端末にPINパッドを具備することを必須としている。楽天では、同社が運営するスマホ決済サービス「楽天スマートペイ」において、「楽天スマートペイIC・磁気対応カードリーダー」の販売を、スマートフォン決済サービス事業者として国内で初めて開始。2015年10月に向け、今後は他のスマートフォン決済事業者からも「Chip&PIN」対応のリーダーが出荷されることになりそうだ。

Visaに加え、JCBデビットカードも登場

デビットカードは、加盟店での決済時に金融機関の預金口座を照会し、即時に引き落とすカードサービス。国内では、日本デビットカード推進協議会が運営する「J-Debit」のほかに、VisaやMasterCardなど、ペイメントカードの国際ブランドが提供する「ブランドデビット」、中国人観光客向けに百貨店や家電量販店などで導入が進む「銀聯(ぎんれん)」がある。

なかでもここ数年、VisaやMasterCard、JCBブランドが付いた国際ブランドのブランドデビットが注目されている。ブランドデビットは、端末、与信システムなど、ペイメントカードの国際ブランドカードが運営するインフラをそのまま利用できる。国内では主として銀行が発行主体になっている。カードの券面には、ブランドマーク、カード番号、有効期限などが記されており、外見上はクレジットカードとほとんど変わらない。

全日本空輸(ANA)とスルガ銀行は、「ANAマイレ-ジクラブFinancial Pass Visaデビットカ-ド」(発行手数料・年会費無料)を2015年1月20日から発行開始

クレジットは設定された与信枠で利用するが、デビットは預金口座と直結した決済を行う。認証はクレジットと同様、加盟店での決済時に、サインか暗証番号(PIN)を用いる。昨今の世界規模での信用収縮や日本における業法の厳格化の動きによりデビットへのニーズの高まりが予測されている。

ブランドデビット発行のメリットとしては、VisaやMasterCard、JCBの加盟店網を利用し、世界中の加盟店で利用できるのが第一点。また、カード発行時は、原則として審査・与信がなく、クレジットカードを持てない若年層、高齢者なども所有可能だ。さらに、利用と同時に会員の口座から引き落としをして、利用から数日以内にカードブランドに支払うため、会員の口座から銀行にほとんど同時に入金されるのも特徴となっている。利用者は銀行の残高の範囲内で利用するため、未収金のリスクを防ぐことも可能だ。加えて、デビットカード利用者がカードで直接決済することにより、ATMに並ぶ回数が減ることも挙げられる。

銀行にとってはキャッシュカードにデビット機能を付帯することにより手数料収入が期待できる。米国ではクレジットの取扱高を上回るほど利用されている。

Visaでは上戸彩さんのTVCMを放送

国内でもこれまでVisaを中心にデビットカードが発行されてきたが、2014年にはJCBブランドのデビットカードとして、大垣共立銀行と千葉銀行が発行を開始した。JCBが金融機関を対象に提供を開始するデビットカードサービスは、国内外のJCB加盟店で各行のデビットカードが利用できる環境を提供する。また、各銀行の要望に応じて、入会・発券、利用情報照会、銀行システムへの中継などの業務処理や、ポイントスキーム、コールセンターなどをJCBが受託することにより、銀行のデビットカード発行に伴う業務・システムの負荷を軽減することが可能だ。従来のクレジットカードに加えデビットカードも一括で受託することにより、クレジットカードで展開している各金融機関の独自サービスを、デビットカード会員にも同様に提供することもメリットとなる。

なお、JCBと海外業務を行う子会社のジェーシービー・インターナショナルは、台湾の商業銀行である華南商業銀行股份有限公司と提携し、JCBブランドとして世界初となるデビットカードの展開を行っている。

銀聯の加盟店は国内37万5,000店舗まで拡大
大手加盟店に加え、個店への導入も加速

銀聯は、中国が国家主導で設立した 金融機関連合によって提供されるオンライン決済システムが付与されたキャッシュカード、あるいはクレジットカード等のサービスとなる。中国国内においてはVisaやMasterCardよりも遙かに多い、1,200万加盟店、63万のATMで利用できる。また、同国内での2014年の取扱高は41兆人民元(約780兆円)となり、今もなお成長が続いている。国際展開も加速しており、現在150カ国で利用可能だ。

中国銀聯のアクセプタンスマーク(銀聯)

また、カード発行は30カ国で行っている。日本における銀聯の加盟店数は、2014年で37万5,000店舗。日本では、主要なカード会社等と連携し加盟店を開拓している。当初は、中国人観光客を対象とした免税店・百貨店・家電量販店を中心とした加盟店開拓を行っていたが、最近では商店街など、個店レベルでの導入も進んでいる。日本国内で銀聯がどこでも使えるように加盟店業種が拡大していくと思われる。また、日本における銀聯取扱高も伸びているそうだ。中国人個人手配旅行者の訪日時旅行中の一人当たりの支出額は、24万7,323円となっており、店舗にもたらす収益性は高い。

また、クレジットカードは三井住友カードと三菱UFJニコス、デビットカードは中国銀行東京支店と中国工商銀行 東京支 店がそれぞれ発行している。

銀聯を導入し、中国人観光客に利用をPRすることで、来店アピールが可能になると思われる。中国からの日本への観光客数は韓国を抜いて首位となっており、そのうち47%が銀聯等のクレジットカード、37%がデビットカードを利用しているため、銀聯の導入が売り上げの向上につながると思われる。

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