2015年3月4日10:35
ICクレジット対応と携帯POS導入で接客・販売・決済までシームレスに
販売員や利用者の利便性向上に向けPOS端末と携帯POSを刷新
東武百貨店では2004年2月から、接触型ICクレジットカード対応と、顧客の面前で決済が可能な携帯型POSの導入を行っている。2013年2月からは、利用者や販売員の使い勝手を考慮したシステムを意識してPOS端末と携帯POSのリプレイスを行った。
6割の利用者がPIN入力を実施
年間累計150万件のICクレジット処理を突破
東武百貨店は、東武百貨店運営の池袋本店、船橋店、東京ソラマチ店、東武宇都宮百貨店運営の宇都宮店、大田原店、栃木店の2社6店舗を展開。2004年2月にいち早くICクレジット対応のPOS端末を導入したが、セキュリティレベルの高いICクレジットカードへの対応は時代の趨勢と考えたそうだ。また、顧客の面前で決済できれば、クレジットカードを持ち運ばない安心感と決済時間短縮も実現もできると考えた。
今では食品売り場などでも普通にPIN入力の決済が行われているそうだ。携帯POSの活用により、販売員が顧客への密着度が増し、操作も慣れてくることから作業負荷も軽減された。販売員にとっては、面前でクレジットカード決済が可能なため、信用・信頼・安心につながったという。
クレジットカードでICチップを処理した件数は、2005年3月で4万件だったが、3年後の同月で8万件に倍増。2008年度において累計100万件で、現在は150万件の処理を突破している。また、従来のシステムでは、多くは入金・包装はバックヤードでの対応だったが、携帯POSとクレジットカードにより、顧客の面前で決済が可能となっている。
2013年2月からはPOSのリプレイスを実施。新システムでは、船橋店が2013年2月、宇都宮が同4月、2014年2月に池袋店が稼働した。東武百貨店 情報システム部 部長 井上直樹氏は、「将来価値を意識して携帯POSを切り替えました」と説明する。東武百貨店は店舗と事務所との距離が近いため、現場密着度は高い。そのため、「旧システムについて、利用者と販売員から使い勝手の改善を要望された点について、改善できるシステムにしていかなければいけない」と考えたそうだ。
例えば、前機種はPIN入力の際に、店員などから見えなくする「隠し」が付いていなかった。また、PIN入力は端末の前面で行う、携帯POSのバッテリーを充電する付属品は、1台で同時に複数充電できるように、といったような要望を出したという。
販売員の長期間の運用を考慮した携帯POSに
今後も売り場支援力、サポートを発揮へ
携帯POSの刷新では、前機種同様に東芝テックに依頼し、協業ベンダーであるキヤノンマーケティングジャパンの決済端末を利用している。また、アプリについては東芝テックが作り込んだ。決済端末の安全性確保を実現する、EMVやPCI PTS(旧PCI PED)などのセキュリティ基準は10年前からバージョンアップしており、求められたセキュリティ要件の中でハードウェアやソフトウェアが作られる。数多くの制約がある中で、販売員や利用者の要求に応えられる製品となったそうだ。セキュリティの関係でどうしても実現できない部分もあったが、ソフトウェアで十分にカバーできる範囲として送り出した。
新システムでは、アラームの音は飛行機の機内で聞くような音色で少し優しくしたり、前機種よりもわかりやすいアプリの表示など、カスタマイズをかけている。また、機種は刷新したが、マニュアルは簡略化されている。井上氏は、「販売員が、5~6年間、継続して運用しても満足いただける範囲となりました」と笑顔を見せる。
大手POS加盟店でいち早くICクレジットカードに対応した東武百貨店だが、携帯POSは、販売員が利用者とコミュニケーションし、リレーションシップを図ることのできる価値創造のツールとして運用されているという。近年では、家電などの加盟店でもICクレジットカード対応のPOS端末を導入するところが出始めており、携帯POSによる面前決済も複数の百貨店で利用されるなど、広がりを見せているのも成果の1つとなっている。
今後も東武百貨店の情報システム部では、売り場支援力、サポートを発揮することで、販売員、利用者が便利で安心して利用できる環境を維持していきたいとしている。