通天閣観光

2015年3月20日8:50

複数の決済サービスの導入で来場者に利便性を提供
クレジットカードや電子マネー決済が売上の約10%に拡大

大阪の新世界にある展望塔「通天閣」は、ユニバーサルスタジオジャパンや大阪城、あべのハルカス、海遊館と並び、五指に入る大阪を代表する観光名所である。その通天閣を運営する通天閣観光が、三井住友カードと提携して、クレジットカード(Visa、MasterCard)、ポストペイ電子マネー「iD」「PiTaPa」、電子マネー「WAON(ワオン)」、および中国人向け決済サービス「銀聯」を、通天閣のチケットブースや物販店などに導入したのが2012年7月。導入から2年半が経過したが、通天閣における複合決済サービスの現状と今後の展望について話を聞いた。

増加する外国人観光客の支払いに対応
女性に人気の高いWAONの支持も受ける

古き良き大阪の街並みが今も色濃く残る新世界に建つ、エッフェル塔を模した通天閣は、なにわのシンボルとして人気の観光スポットである。5階には大阪が一望できる展望台や、足の裏をなでると幸福が訪れるというビリケン像が、地下には江崎グリコをはじめキョロちゃんやチキンラーメンなど、大手食品メーカーのアンテナショップが集う「通天閣わくわくランド」が併設され、年間100~120万人もの観光客が訪れる。さらに、近年は政府主導のもと行われているインバウンドツーリズムのプロモーション、円安などの効果により、外国人旅行者が急増。平日に至っては約4分の1を外国人旅行者が占めるという。外国人旅行者は台湾や韓国、中国などが中心だが、2013年にビザが免除されたタイからの旅行客も増えており、彼ら外国人旅行者にとって大きな魅力となっているのが、銀聯やクレジットカード決済である。

通天閣のお土産販売店のレジ

加えて、通天閣を二度三度訪れる国内のリピーター客が増えているのも近年の特徴である。通天閣では、2012年に100周年を迎えたのを契機に内部を改装。2階と3階は、通天閣ができた当時の昭和初期の雰囲気が楽しめるフロアになっている。また、5階の展望台は、豊臣秀吉が作った金の茶室をイメージした金ピカのブースを設け、大阪らしい「こてこて感」を全面出した、日本一面白い塔を目指している。また、通天閣発アイドル「まいどリームズ」や二足歩行をする通天閣ロボなどによるイベントや、クリスマス仕様をはじめとする特別なライトアップを随時開催し、リピーターを集客することに成功している。関西圏内の入場者にとってはまだまだなじみの薄い電子マネーだが、通天閣には日本全国から観光客が集まるため、電子マネーの利用も徐々に拡大。なかでも、最も利用されているのが、女性に人気の高い「WAON」だという。

通天閣ができたのは1912(明治45年)。その後火災により解体され、二代目通天閣が市民有志の手によって再建されたのが、1956(昭和31)年で、以来入場料はもちろん、館内にある物販店でもすべて現金のやりとりを行ってきた。2012年に複合決済サービスを導入した当時も、どれだけ反応があるのか未知数であったが、入場数は右肩上がりに増え続け、2012年には年商8億円のうち物販の占める割合は1億8,000万円だったのが、2014年には年商10億円、物販は5億円に迫る勢いとなっている。

現金管理リスクの管理を抑え混雑解消につなげる
複合決済サービスで将来的に25%を目指す

通天閣のチケットブースやお土産販売店、カフェでは、クレジットカードや電子マネー「iD」「PiTaPa」「WAON」および「銀聯」の決済が可能だ。三井住友カードから提案を受けて実現したが、導入の成果は表れているという。

通天閣観光 取締役副社長 高井隆光氏

「顧客にとってスムーズな決済が可能となるだけでなく、通天閣観光にとっても現金管理リスクが抑えられるほか、レジの混雑緩和につながるため、双方の利便性が高まるメリットがあります」(通天閣観光 取締役副社長 高井隆光氏)

2015年1月現在、クレジットカードや電子マネー、銀聯での決済は売上の約10%を占めており、複合決済サービスが顧客、通天閣観光に双方にとって利便性を享受できている結果と言えよう。とはいえ、大阪は商人の町であり、いまだに現金決済が基本と考えているスタッフも多く、カード決済の端末を操作できない者が少なからずいるのが現状である。

そこで、今後は一層の人材教育を徹底させ、端末を操作できるようになるだけでなく、来場者に対して積極的に複合決済サービスを勧められるようにしていく方針である。そして、直近の目標として、複合決済サービスの割合を25%まで拡大していくことを目指している。

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