「2020 Cashless Japan」に向けた決済サービス概観

国際ブランドがグローバルに提供する決済サービス
三井住友カードやオリコがNFCモバイルペイメントを提供

国際ブランドが提供する非接触決済サービスの動向をみると、Visaでは、「Visa payWave」を提供している。Visa payWaveは、2015年6月時点において68カ国で利用可能だ。米国では2014年のEMVコンタクトレス対応端末の普及台数は22万台強だったが、最近200万台の設置を突破するなど、対応環境が整備されてきた。日本でもインバウンド需要の拡大に向け、世界各国で普段使いの決済が望まれるとみている。国内では、オリエントコーポレーション(オリコ)やジャックスから、搭載のクレジットカードが発行されている。また、住信SBIネット銀行や北國銀行発行のブランドデビットにも機能が搭載される。

▲NFCスマートフォンによる「Visa payWave」利用イメージ(三井住友カード)

一方、MasterCard Contactless(旧 MasterCard PayPass)は、2015年7月時点で世界70カ国300万カ所以上の店舗・施設で利用することが可能だ。日本においては業界に先駆けて、カード会員にとって利便性の高い支払手段を提供するため、2006年4月より複合型商業施設イクスピアリ(千葉県浦安市)で対応端末を導入。また、オリコやジャックスから搭載のクレジットカードが発行されている。

日本では、モバイルを活用した動きも始まっている。三井住友カードは、2015年2月から、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、Visaと協力して、NFCを搭載した「おサイフケータイ」対応スマートフォンに対応した非接触IC決済サービス「Visa payWave」の発行を行っている。

同社では商用化に向け、2014年3月から500名のモニター会員を募り、先行してVisa payWaveの発行を開始した。モニターの中には日常でおサイフケータイを利用している人が多く、海外でも同様に使えて便利、という声が多かった。Visa payWaveは、国内の加盟店がまだ少ないため、利用が限定される部分はあるが、会員数は、毎月着々と伸びているそうだ。

また、国内で最初の商用NFCサービスとなったオリエントコーポレーションの「Orico Mobile Visa payWave」は、今後の成長も見込んでローンチに至ったという。サービス開始にあたっては、「おサイフケータイ」によるモバイルサービスを提供した時のノウハウがあったことと、古くから研究を進めていたため、運用面で大きな苦労はなかったそうだ。現状のモバイル対応のコストは、「おサイフケータイ」でのカード発行時と比べて、それほど大きな差はないとしている。今後のMasterCard ContactlessおよびVisa payWaveの展開については、提携カードとセットで加盟店開拓を進めれば、相乗効果で利用されると期待している。また、モバイルでの発行に関しては、「HCE(Host Card Emulation)」をベースとしたモバイルペイメントへの移行を視野に入れているということだ。HCEは、NFCモバイルペイメントにおける携帯キャリアというスキーム上のハードルと、SIM(Subscriber Identity Module Card)やSE(Secure Element)といった技術的なハードルを取り払うソリューションとして注目されている。

JCBでもQUICPayで培ったノウハウを活用しながら、HCEやトークナイゼーションを活用したサービスを構築しているという。なお、トークナイゼーションは、デバイスごとにユニークな番号、すなわちトークンを発行することによりセキュリティレベルを高めるソリューションであり、EMVCoで2年前から標準化作業が進められている。

そのほか、Appleの「Apple Pay」、サムソンの「Samsung Pay」、Googleの「Android Pay」といったグローバルプレイヤーが提供する決済サービスの広がりも期待される。

モール事業者のID決済サービスが注目を浴びる
Amazonが「Amazonログイン&ペイメント」を国内で提供

モール事業者のID決済サービスも注目を集めている。数千万人のユーザーを有しているサイトも多く、その会員をそのまま送客できる。また、クレジットカード番号等を入力する必要なく、IDとパスワードのみで簡単に支払いが行える点も特徴となる。「楽天ID決済」は「楽天スーパーポイント」、「Yahoo!ウォレット」は「Tポイント」、「リクルートかんたん支払い」は「Pontaポイント」といった汎用性の高いポイントが付与されるメリットも魅力となっている。

国内のモール事業者のID決済でもっとも利用が多いと言われる楽天では、「楽天ID決済」を、これまで楽天の“準経済圏”拡大を担う手段として展開してきたが、2015年以降は楽天外部でもオープン戦略として強化している。

▲楽天は、ショッピングカートとの連携など、楽天ID決済を強化

総合オンラインストアAmazon.co.jpにおいては、2015年5月11日から、外部ECサイトでAmazon.co.jpのアカウントでログインし、支払いができるサービス「Amazonログイン&ペイメント」を提供開始した。サービス開始から半年強が経過したが、初動は海外でのスタート時を上回っており、同社ではさらに国内でのサービス導入が広がると感じ取っているようだ。「Amazonログイン&ペイメント」は、同サービスを導入しているECサイトにAmazon.co.jpのIDとパスワードでログインすることで、Amazonのアカウントに登録されている配送先住所やクレジットカード情報を利用できるのが特徴となる。

また、LINEの「LINE Pay」も外部ECサイトでの利用が可能だ。LINEでは、2016年春からリアルの店舗でも「LINE Pay」が利用できるサービスを開始する予定だ。

ID決済サービスを世界中で展開しているコマース企業としては、ペイパル(PayPal)が有名だ。現在、PayPalは 203の国と地域で、100通貨以上での決済、57通貨で銀行口座への入金、26通貨での支払いの受け取りが可能なサービスして、1億7,900万人および 1,000万のビジネスが世界中で利用している。日本でも中小や越境取引に取り組む企業等の利用が多いという。

国際ブランドのチェックアウトが世界で広がりを見せる
国内ではユーシーカードが「MasterPass」を提供開始

MasterCardでは、デジタル決済サービス「MasterPass(マスターパス)」を提供。世界各国の25万の加盟店で使用でき、アジア太平洋地域では9つの市場でサービスを開始している。また、「MasterPass」はオンラインのチェックアウトなどを中心にサービスを展開してきたが、今年度の後半に対面の非接触決済のサポートを開始する予定だ。「MasterPass」は、金融機関(イシュア)から消費者へサービスを提供するだけではなく、コーヒーを注文するなど、スムーズな支払いが選べるように、アップグレードしていく。国内では、ユーシーカードが「MasterPass」のサービス提供に力を入れている。

▲MasterCardは「MasterPass」の国内展開に力を入れる

また、Visaでは、「Visa Checkout」をオーストラリア、アルゼンチン、ブラジル、カナダ、チリ、中国、コロンビア、香港、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、南アフリカ、アラブ首長国連邦、アメリカ合衆国の世界16カ国で提供している。サービス開始から1年半の2016年1月には、「Visa Checkout」の登録会員数は1,000万人を突破し、提携契約を結んだ金融機関は世界16か国の600社に及んでいると発表している。なお、国内では「Visa Checkout」は提供されていない。

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