- 2018-9-11
- 2章
2016年3月25日8:00
京都オリジナルのアクセプタンスマーク掲示推進と伝統産業振興にタッグ
京都市とビザ・ワールドワイド(Visa)は、急増する訪日外国人客(インバウンド)受け入れの環境整備に協働すべく、2015年12月に「地域活性化包括連携協定」を結んだ。外国人観光客が京都でストレスなく買い物や食事を楽しめるような利便性の向上に努め、ひいては地域活性化への寄与を目指す。
屈指の観光都市京都とワールドブランドVisaの邂逅
支払いの利便性向上を図り、インバウンド消費のさらなる取り込みへ
観光における課題解決に向け、カードブランドと地方自治体が各種キャンペーンを手掛けつつ決済環境も整えていくという包括的な試みは、実は国内初である。「京都への誘客等を働きかけるツールを京都市が世界中に構築しようとすると費用面など非常に大変ですが、Visa様がお持ちの圧倒的な顧客基盤等を活用した形でご支援いただけるのは非常にありがたいですね」と、京都市産業観光局 観光MICE推進室 国際戦略係長 寺田敏隆氏はその利点を語る。
取り掛かりは、カード利用可能店舗であることを示すための、京都オリジナルのアクセプタンスマークの開発だ。Visaが札幌で行った調査によれば、入口にマークがあれば安心して入店できると回答した外国人観光客は8割に上る。購買行動を後押しするツールであるが、京都市内の297の飲食店を対象に調べたところ、クレジットカードが使える173店舗のうち、店頭にマークがあったのは15店舗だった。
新マークのデザインはVisaが市内でアンケートした声が反映され、古都の景観に馴染む洗練されたもの。寺田氏は「京都はフランス人観光客が多いので、英語のほかフランス語のメッセージも入れていただきました」と振り返る。反響も上々で、京都駅至近の大型ショッピング施設からはモール内各店に掲示したい旨の申し出を受けたという。会見翌日には免税店を中心にしたセミナーを開催し、新マークの配布を行った。
現在、市では免税品拡大施策を図っており、2014年4月1日時点で178店だった免税店が、2015年10月1日時点では、1,012店に急増。これら免税店へのマークの掲示推進とともに、外国人観光客の利用が多い主要駅直結の地下街の店舗などにも掲示を進める予定だ。引き続き、免税制度を説明したWebサイトや、多言語コールセンターなど、サポート体制構築にも注力する。
外国人観光客の消費額アップに力を入れる
観光以外でもクレジットカードやIC決済強化
京都市の外国人宿泊者数は、平成26年度に過去最高の約183万人を記録。権威あるアメリカの旅行誌「Travel+Leisure」で、2年連続「ワールドベストシティ」の1位を獲得した報道も記憶に新しい。しかし意外にも、外国人観光客1人あたりの京都での消費額は、国内平均を下回る約12万5千円(平成26年)に留まる。京都では寺社等の観光を中心に、買い物は空港近くの他都市で済ます外国人客が多く、いわゆる「爆買い」の恩恵等が薄いのが実情だ。
「京都の観光消費額を2020年には年間1兆円に高め、京都経済をより活性化しようとの目標を掲げています」と寺田氏。魅力的な産品が多い京都だが、旺盛な購買意欲を特に74の伝統産業品へ向けてもらうべく、Visaと連携した外国人観光客向けキャンペーン「KYOTO x Visa Campaign」では賞品に採用し、キャンペーンサイト等で魅力を発信するとともに、賞品を手にされた外国人観光客に伝統産業品の素晴らしさを知ってもらい、購入に繋げることを目指す。
また、交通インフラの利便性向上策として、京都市交通局の市バス・地下鉄ともに「PiTaPa」や「ICOCA」等の交通系ICカードに対応。2016年4月からは、関西統一交通パス「KANSAI ONE PASS」のICカードも試験的に発売する。また、地下鉄駅構内にはATM設置を推進している。さらに、外国人観光客の利用も多いタクシーでは、クレジットカード決済可能かつ語学力やホスピタリティ等の一定水準を満たすタクシーの専用乗り場を京都駅に設ける実証実験も予定している。
なお、市では昨今、クレジットカードによる公金支払いの導入にも注力しており、水道料金・下水道使用料はすでにクレジットカード継続払いが可能だ。寺田氏は「観光以外のセクションでも支払いのマルチ化を進めており、今年から個人市・府民税、固定資産税など4つの税目がクレジットカードで納付可能となります。引き続き、市民の皆様にも観光客の皆様にも利用しやすい決済環境を順次進めていきます」と温かく語った。