- 2018-9-30
- 5章
2016年4月27日8:00
お礼品には体験交流型メニューも取り揃え、地域おこしの取り組みとも連携
松浦市ではふるさと納税の取り組みをPR活動の一環と位置付け、2015年10月に設置された「ふるさと魅力発信係」が業務を担当・推進。「ふるさと納税サイト さとふる」「楽天市場 ふるさと納税」などを活用して寄付を募っている。お礼品として、海産物をはじめとする地元の特産品のほかに、いかだ作り体験、田舎暮らし体験などの体験交流型メニューも多数ラインナップすることで、地域おこしにもつなげている。
ふるさと納税のお礼品を通じて地場産業をアピール
長崎県北東部にあり、水産業などが盛んな松浦市では、2008年に「松浦ふるさとづくり寄附条例」を制定し、ふるさと納税の取り組みを開始した。当初は主に地元出身者を対象に寄付金を募っていたが、2015年の税制改正で控除額が拡充したことなどを機に、お礼品として特産品を取り揃え、広く全国に呼びかけることとした。
お礼品は、とらふぐ、鯛、本マグロ、いりこ、かまぼこといった海産物およびその加工品をはじめ、長崎和牛ステーキ、菓子、日本茶、焼酎、漬物、紳士オーダースラックス、松浦を題材にした風景画などと多岐にわたる。同市ではこれを、特産品や地元企業を市外にアピールする良い機会だと考えている。また特徴的なのは、体験交流型メニューが充実していること。いかだ作り体験、田舎暮らし体験、田舎そば打ち体験、いももち作り体験などがラインナップされている。
ふるさと納税の取り組みにおいては、ソフトバンクグループのさとふる、および、楽天を業務委託形式で利用している。寄付の申込方法は、「ふるさと納税サイト さとふる」「楽天市場 ふるさと納税」の松浦市の専用Webサイトから、必要事項を入力して行う。さとふるはクレジットカード払いとソフトバンクまとめて支払いに対応。楽天市場はクレジットカード払いと楽天バンク決済に対応している。なお、2016年4月からは、新たに寄付サイトの「ふるさとチョイス」の利用を開始し「Yahoo!公金支払い」を導入する予定だ。
Webサイト以外では、ファックス、メールまたは郵便で所定の「寄付申込書」を提出する方法や、市、金融機関、郵便局の窓口でも寄付の手続きができる。
市のPRの一環としてSNSやTwitterも活用し情報を発信
同市はふるさと納税を市のPR活動の一環ととらえている。業務を担当しているのは、2015年10月に設立された「ふるさと魅力発信係」だ。
ちなみに松浦市では「松浦市地域おこし協力隊」を設置し、都市部から同市に移住して地域活性化に貢献する隊員を募集。2015年にその第1期となる隊員を迎えた。
ふるさと魅力発信係には、その地域おこし協力隊の隊員が1名おり、市のPRのほかにふるさと納税のPRも担っている。パンフレットや、お礼品を掲載した年2回発行のカタログを作成・配布しているほか、Facebook、Twitter、Instagramなどを活用して情報を発信。2016年3月末には、ふるさと納税特設サイトが完成する予定だ。
集まった寄付の額は、2015年4月から12月までの合計で約3億6,000万円。年度末までには4億円に届くと同市は見ている。2016年度の目標額は10億円だ。
この目標額を達成するための一番の課題は、十分な数の魅力的なお礼品を確保することだ。これはポイント制度の仕組みとも関連がある。
お礼品は寄付額に応じて付与されるポイントとの交換で受け取ることができるが、松浦市の場合、ポイントの繰り越しができず、その場で交換するシステムになっている。一方で、「さとふる」や「楽天市場」にはほかの多くの地方自治体が提供するお礼品も多数並んでいる。そのため、最初は同市に寄付しようと思っていた人も、欲しい品物が品切れになっていれば、簡単にほかの自治体に浮気をしてしまうのだ。同市では人気の品物を継続的に確保する努力をすると同時に、品揃えを今以上に拡大していく意向だ。
「業務を委託していることによるシステム上の問題や組織の体制の課題もあり、ポイントを繰り越せるようにすることは今のところ考えていませんが、将来的な検討課題と思っています。現行のやり方で最大限の成果を上げる方法を考えていて、お礼品を出品していただいている事業所には、従来の取引先との事情もあるでしょうが、ふるさと納税の取り組みの意義を伝えて、お礼品の数を今まで以上に確保してもらえるように協力をお願いしていきます」(松浦市 政策企画課 課長補佐兼ふるさと魅力発信係長 金子英樹氏)
寄付者の利便性を高めるために、4月から申込サイトを増やすことで、業務委託先も増えることになる。ただ、「さとふる」と「楽天市場」の2サイトで運営している現在でも、それぞれに異なる業務処理が必要で管理業務が複雑多岐にわたることから、内部・外部を含めた業務体制を整えながら対応を考えていきたいとしている。