ナノ・ユニバース

2016年4月22日8:00

自社開発アプリやタブレットPOSの導入でCRM強化を目指す
ECと店舗を連動させたオムニチャネル化に本腰

ヨーロピアントラディショナル商品を中心に扱うセレクトショップのナノ・ユニバースは、現在全国で65店舗を展開する。2013年からはECにも注力し、店舗と連動させたオムニチャネル化を推進している。そのフックとなるのは自社開発したスマホ・タブレット用アプリで、顧客を一元化会員として囲い込み顧客満足度の向上やCRMの強化を目指す。顧客負担を減らしたスムーズな決済につなげるため、昨年末には全店舗へのタブレットPOS導入も果たした。

まずは物流から着手しBtoC体制を整備
顧客データ一元化や顧客接点拡大に注力

全社的なオムニチャネル化に取り組み始めたのは2013年で、まず着手したのは物流センターの基盤づくりだった。自社運営の大型センターを新たに設けてシステムを構築し、社員の増強も図った。

次に手がけたのが自社ECサイトの直営化で、CRMシステムを入れ替えてEC会員と店舗会員の一元化を図った。これにより、高額なネットプロモーションをしなくても店舗スタッフの声掛けで会員数や売り上げが増え、対前年比2倍の増収といった事象が起きた。また、「ECと店舗を連動させる自社開発アプリを全店のタブレットに入れたことで倉庫在庫を含めた全店の在庫閲覧や配送手配が可能となり、販売機会ロスの削減につながりました」と、ナノ・ユニバース WEBグループ ディレクター 越智将平氏は成果を口にする。


▲ナノ・ユニバースの会員専用アプリでは、チェックインしただけでポイントが貯まる「デジタルスタンプカード」、チャット機能、「FAVORITE ITEM(お気に入り)」等を利用できる

さらに、直営サイトの強化として、柄や袖丈、素材などから商品の絞り込みが可能な検索機能や自分のサイズにフィットする商品の検索機能、クイックビュー機能など、さまざまな改修を施した。在庫確認や、サイトで購入した商品を指定店舗で受け取れるサービスも始めた。

直営サイトには、商品購入者やサイト訪問者を会員化し、さらに自社店舗への来店も促すという重要ミッションがある。実現に向けて導入したのが、自社開発のアプリだ。会員になるにはこのアプリをスマホなどにダウンロードしなくてはならない仕組みで、アプリを通じてさまざまなアプローチを行い会員の来店促進を強化している。

会員特典の軸となるツールとして、「デジタルスタンプカード」を発行。全店舗にはビーコンが配備され、一回来店(チェックイン)しただけで自動的にスタンプが貯まる。20回行けば1000ポイントが付くことになっているが、キャンペーン時はポイントアップ企画などで来店を促す。アプリにはそのほか、店舗の商品バーコードをスキャンするとお気に入りページに登録できる機能や帰宅後に店舗スタッフとコーディネートについてチャットできる機能などさまざまな機能を搭載し、オムニチャネルを実践している。

会員登録の際には、たとえば顔写真をアップすればポイント還元率を1%上げるというように登録した情報に応じて還元率が高まるサービスを提供。こういった特典の提供により顧客情報を収集し、タブレットを通じて来店時の接客レベルアップを目指す。

決済効率化と顧客負担軽減を実現
大手モールなどとの連携でメジャーID決済導入

決済手段で最も多いのは自社登録のクレジットカードで、続いて代引き、コンビニ支払いの順。近いうちに後払い決済も投入する予定でいる。決済関連で画期的なオムニチャネルの取り組みとしては、クラウドサーバで管理されているタブレットPOS用のアプリを2015年末に全店舗に導入したことだ。越智氏は、「タブレットPOSを使い始めてからは、店内の空いたスペースで顧客を待たせずに応対することが可能となりました。欠品商品を検索して配送手配した後は面倒なクレジット決済手続きは不要で、顧客がタブレットのボタンを押すだけで決済が終了するというスムーズな流れが実現しています」と口にする。タブレット決済の場面で効力を発揮するのが、先行して実施した顧客の会員化・一元化だ。あらかじめ会員になっていることで配送先情報やクレジットカード情報などが登録されており、導入効果をいっそう高めることになる。

今後は、メジャーID決済をタブレットPOSにも導入していきたい考え。Webではすでに取り入れているが、ポイント獲得効果もあってかなりの実績が出ており、利便性の高い決済方法は売り上げ増に貢献するとの確信を持つ。

さらに、成長に向けた越境EC展開も見据えており、海外でも使える会員アプリなどのコンテンツづくりに着手した。商品情報だけでなく自社のオリジナル記事を含む雑誌機能を付加することにより、商品にとどまらず“情報のセレクトショップ”の立場で顧客接点の拡大につなげる。すでに昨年秋には台湾でアプリのダウンロードイベントを開催し、こういった現地体験を通じ海外で認知度を高めていく。

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