- 2018-9-30
- 3章
2016年4月6日8:00
常時介護が必要な方等の生活を支援するため、「おおさかもずやんカード」を発行
プリペイドカードを採用することで利用者の利便性向上・店舗の負担軽減を実現
大阪府では2015年度重度の障がい児者や児童養護施設で暮らす児童などの生活を支援するため、約2万6,000人を対象に、プリペイドカード「おおさかもずやんカード」を配布。プリペイド方式を採用したことによって、商品券と異なり利用者が釣り銭を気にすることなく買い物ができる、店舗の換金業務の手間を軽減できるなど、各方面でのメリットが生まれている。
福祉事業の給付金の支給に
プリペイドカードを活用
大阪府では、平成26年度の国の「地域住民生活等緊急支援のための交付金(地域消費喚起・生活支援型)」を活用し、重度障がい等で常時介護が必要な人や児童養護施設等で暮らす児童の生活を支援するため、プリペイドカード「おおさかもずやんカード」を配布。常に介護が必要な障がい者には5万円分、児童養護施設などで暮らす児童には2万円分をそれぞれ支給した。
対象となる約2万6,000人に2015年7月より案内と申込書を送付し、申し込みを受け付けた結果、対象者の90%以上が手続きを経てこのカードを受け取った。使用期限は2016年2月末となっている。
支給方法としてプリペイドカードを採用するまでに、府ではさまざまな検討を重ねた。まず、貯金に回ってしまう可能性があり、消費喚起効果が不確かであることから、国が原則として対象としていない現金支給は選択外。商品券は、制作にコストや時間がかかる、釣り銭が出ないため利用者にとって不便、換金にかかわる店舗の負担が大きい、集計・精算にかかる工程が多いためにその期間を勘案して使用期限を短く設定せざるを得ないなどの理由で、望ましくないと判断された。
大阪府政策企画部 企画室計画課 課長補佐森口直人氏は、「おつりが出ない商品券と違って小銭を足して買い物をする必要もないため利用者がストレスなく使え、精算業務にかかる手間や時間も軽減できるプリペイドカード、もしくは電子マネーを採用することを決定しました」と説明する。そして、使える店舗・施設が多いこと、期限を過ぎたものは使えないようにすること、ポイントやチャージ機能を付けないことといった条件を提示して入札を行った結果、ジェーシービー(JCB)に委託して事業を実施することとなった。
「JCBプレモカード」が使える店舗で
自由に好きなものを購入
「おおさかもずやんカード」は、JCBが2013年から発行しているプリペイドカード「JCBプレモカード」が使える全国30万軒以上の店舗・施設およびECサイトで利用できる。JCBでは、今回の府の要望を受けて、府内のローカル・スーパーなど、新たな加盟店も開拓したという。
カード裏面には本人署名欄を設けているが、店頭ではサインレスで利用が可能。決済は利用と同時にリアルタイムで行われ、利用者は「おおさかもずやんカード」の専用WEBサイトのマイページで、いつでも自分の正確な残高を確認できる仕組みだ。
事業の運営に当たる「もずやんカード事務局」では、平日の10時~17時に電話で問い合わせに応じている。同部 主事 中川亮太氏は、「申込書の送付を始めた当初、ここに受け付けきれないほどの問い合わせが殺到し、府庁にも電話が入って、対応に追われた時期がありました」と苦労を打ち明ける。その内容で多かったのは、「これは本当に府がやっている事業なのか?」「詐欺ではないのか?」というもの。また、「このカードを使うと、銀行から代金が引き落とされるのではないか?」という、プリペイドカードの認知がまだ浸透していないことを物語る声も聞かれた。
ほかに多いのは、カードが使える店舗についての問い合わせ。JCBではクレジットカード「JCBカード」の発行も行っており、これと「JCBプレモカード」が使える店舗がイコールではないことから、若干の混乱が生じたこともあった。
「ただ概ね予想した通りの運用ができているものととらえており、プリペイドカードを選択したのは正解だったと評価しています」(森口氏)
「おおさかもずやんカード」の使い道は、玩具やゲームであろうと、レジャーであろうと、基本的に利用者の自由。大阪府内に限らず、全国どこで利用してもかまわない。ただ府には、年度末までに国に対して事業の実績を報告する義務があるため、使用期限が来た時点で、利用額のデータをまとめることにしている。併せて、事務局に寄せられた利用者の声も集計し、今後の事業に活かしていく意向だ。