大阪市

2016年4月12日8:27

中学生を対象とした塾代助成事業で写真付きのICカードを採用
学びたい意欲と子育て世帯を応援するため学校外教育にかかる経費を月額1万円まで助成

大阪市では、子育て世帯の経済的負担を軽減するとともに、中学生の学力や学習意欲、個性や才能を伸ばす機会を提供することを目的に、学習塾やスポーツ・文化教室などの学校外教育に係る経費を、一定の所得要件を満たす家庭の中学生に1人当たり月額上限1万円を助成する「塾代助成事業」を行っている。同事業のサービス利用時に使用する「塾代助成カード」は、写真付きのICカードだ。提供されるべきサービスが、それを享受すべき本人に確実に提供されるように、この形に行き着いたのだという。

目的に沿った利用を推進するため写真付きICカードを採用

大阪市では、子育て世帯の経済的負担を軽減するとともに、中学生の学力や学習意欲、個性や才能を伸ばす機会を提供することを目的に、学習塾やスポーツ・文化教室などの学校外教育にかかる経費を助成する塾代助成事業を行っている。

2012年9月に大阪市西成区で「大阪市児童生徒就学援助制度」認定世帯および生活保護適用世帯を対象に試行を開始し、2013年12月に同要件で対象地域を大阪市全域に拡大。さらに2015年10月には市内在住の中学生の約5割が対象となるよう所得制限限度額を設定し、助成対象となる世帯を拡大した。

▲月額上限1万円まで利用できるICカード「大阪市塾代助成カード」

具体的な助成の内容は、一定の所得要件を満たす家庭の中学生に月額上限1万円まで利用できるICカードを交付。これを、大阪市に登録された学習塾やスポーツ・文化教室などの参画事業者で使用してもらうというものだ。

助成金の支給方法として、西成区での試行段階では紙のクーポン券を使用していたが、転売などの不正利用の恐れがあるとともに、参画事業者の請求事務が煩雑であるという問題があった。そこでこれに代わり、全市展開のタイミングで導入したのが、写真付きのICカードだった。

この制度の利用希望者は、まず大阪市に「塾代助成カード」の交付を申請。条件に該当していることが認められれば「塾代助成カード」が交付・送付されてくるのだが、これが写真付きのICカード(ソニーのFeliCa Lite-Sを採用)となっている。

中学生は学習塾などの参画事業者を利用する際に、窓口でこのカードを提示。参画事業者は本人確認をした上で、PCと、大阪市から無償貸与されるICカードリーダーを使って、サーバに登録されているチャージ金額などの情報を確認し、利用明細を入力することによって、大阪市に利用料金の請求手続きを行う。後日、大阪市から参画事業者に請求額が支払われる仕組みだ。

「参画事業者がサービスを提供したかどうかを確認するだけならば、ICカードである必要はないかもしれません。最も重要なのは、そのサービスが、享受すべき本人に確実に提供されたかどうか。それを確認するためには、写真付きのICカードが有効だと考えています」(大阪市こども青少年局 企画部 青少年課担当係長 小嶋茂氏)

利用する中学生の立場に立ってサービスの使いやすさを追求

塾代助成事業の周知は、市の公報誌、各種メディアを通じた報道発表のほか、住民基本台帳の情報をもとに中学生のいる家庭に直接送付するダイレクトメールで行っている。また塾代助成事業運営事務局ではコールセンターを設け、電話およびFAXによる問い合わせを日・祝日を除く平日の12時~20時まで受け付けている。

大阪市内に住む約6万3,000人の中学生のうち、この制度の利用条件に当てはまるのはその約5割の約3万1,500人と見られるが、平成27年12月現在、その半数以上の約1万8,000人にICカードが交付されている。そして実際にこのカードを利用しているのは、平成27年11月の実績で約1万3,500人だ。

「この利用が高いか低いかの判断は難しいところですが、制度の周知を徹底するとともに、制度利用に際しての利便性向上を検討し、必要とする中学生が確実にサービスを受けられるようにしていきたいと考えています」(同部課長代理 久山真紀氏)

対象となる中学生は多感な年代。ICカードを提示してサービスを受けることを「恥ずかしい」と感じ、利用をためらう中学生がいることもアンケート調査結果などから明らかになっている。そのため大阪市では参画事業者に対し、利用者にストレスを与えないようにカードの受け渡し方法等を工夫してほしいといったきめ細かな要請も行っているという。

塾代助成事業の真価がはっきりするのは、制度を利用した中学生が学校外教育を受けた成果を実らせる、数年、数十年先のこと。大阪市ではその成果を信じ、今は1つ1つ、目の前の課題の解決を図っているところだ。

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