当面は10%超の利用率を目指す
ルルカの店舗での浸透も進む
電子マネーに関して、スタート時には大々的な告知はしなかったため、2016年11月時点での利用率は静かな立ち上がりとなった。
1カ月後の12月に、「しずてつストア」で前月に一定金額以上ご利用いただいた「ルルカ」会員を対象に、チャージ時のポイント付与率を優遇するキャンペーンを展開。対象者にDMで告知して実施したところ、非常に反応が良く、チャージ額は11月の220%に跳ね上がった。
これが功を奏したこともあり、2017年1月時点の、「しずてつストア」の売上に占める電子マネー利用率は倍増した。
利用率は10%を超えると一気に拡大すると言われているため、早い時期に2桁台に乗せたい考え。来年度の目標は12%だ。
自動車移動が多い静岡県は、東京や大阪等に比べ、決して電子マネーの利用が浸透しているエリアではない。しかも「ルルカ」のカードホルダーには、新しい技術に苦手意識を持つ年配者が多い。しかし、そういう人たちにこそ電子マネーを利用してもらい、行動範囲を広げてほしいと同社は考えている。
「ルルカを1枚持って、電車やバスで街まで来て、気軽に買い物を楽しんでほしいのです。東北地方のスーパーでは、販売員が店頭で年配のお客様に『便利ですよ』と使い方を説明すると、ぐんと利用が増えたという事例も聞いていますので、当社の店舗でも必ずお客様に喜んでいただき、お使いいただけるという確信を持っています」(大澤氏)
チャージ額の上限は5万円だ。電子マネーでの買い物は3,000円程度で、それ以上はクレジットカードに移行するとも言われているが、中には、限度額いっぱいまでチャージして、同社のショッピングセンターショッピングセンター「新静岡セノバ」での衣料品の購入に充てるといった使い方をしている顧客もいるという。静岡鉄道では、高額利用も視野に入れて、利用を促進していきたい考えだ。
グループ内から中心市街地活性化まで広がる可能性
販促活動へのデータ活用も想定
レジにかざすだけで会計が済み、ポイントも貯まる電子マネーは、現金での精算に比べて時間が短縮できるため、レジ待ちを解消する効果が期待できる。
同社では2017年1月26日から「しずてつストア新静岡Cenova店」に電子マネー優先レーンを設け、昼時や夕方に弁当などを購入するお客様をそちらに誘導することで、レジ通過の速度がどれだけ上がるかを具体的に検証しているところだ。
レジ待ちが解消されればより広い売り場でお買い物を楽しんでいただける。お客様の店内の滞留時間が短縮すれば、駐車場の回転率も上げられ、お客様の利便性は向上する。
こういった効率改善の面でも、電子マネー導入の効果は大きいと同社は見ている。
大日本印刷 情報イノベーション事業部 C&Iセンター マーケティング・決済プラットフォーム本部マルチペイメント企画開発部 部長 西田真氏は、「さまざまな業種のグループ企業を擁する静岡鉄道様は、データの収集・活用についての大きな可能性を持っています。今回の取り組みは、その第一歩なのです」と、導入の成果を口にする。
その実現に向けて静岡鉄道ではまず、電子マネーを利用できる店舗・施設の拡大を図る。コンビニなどでも使えるようにして、子どもたちにも利用を拡げていきたいとしている。また、要望が多いのが、タクシーでの利用だ。グループ会社の静鉄タクシーの平均単価も「しずてつストア」と大きく変わらない。さまざまな決済手段の連携も視野に入れつつ、導入に向けた検討を急いでいく意向だ。
今後は、静岡市の中心市街地活性化事業の1つとして電子マネーの利用促進を進めていく計画もあり、現在、市と施策について検討している最中である。
一定の利用データが蓄積された段階で、販促への活用も視野に入れる。例えば、購入履歴に基づいて、そろそろ補充したほうがよい商品をリマインドするメッセージをレシートに印字するといったダイレクトマーケティングの展開を考えているという。また、将来的なモバイル対応も考えられる。
DNPの「決済連動マーケティングプラットフォーム」では、販促活動、モバイル対応など、さまざまなサービスのサポートが可能だ。静岡鉄道の地域密着型のサービスにおいて、DNPの総合力が発揮される可能性もありそうだ。
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