2020年を目前に非接触IC決済が飛躍的普及の兆し
今年が日本の「Visa payWave」元年となるか
ICカード取引の国際標準規格(EMV)に準拠した、Visaの非接触IC決済サービス「Visa payWave(Visaペイウェーブ)」。クレジット、デビット、プリペイドの多様な決済手段に対応し、かつ、世界で対応決済端末の設置台数が急速に伸びている通信規格NFC Type A/Bを採用している。2016年3月現在、世界71の国と地域で利用されており、ワールドワイドに着実な普及が進む。
Visa Europeのリリースによると、ヨーロッパでの「Visa payWave」発行枚数は2016年5月時点で1億6,500枚で、3年前の6,900万枚と比べ倍以上。Visa対面取引の5回に1回は使われている。また、EMV化の進む米国では、2014年のApple Payの開始以後さらに加盟店数が急増している。日本でも最近はイシュアが積極的に発行するようになっており、海外からの旅行客のみならず国内利用も伸び始めているという。
新技術推進部 部長 鈴木章五氏は「日本では昨年末にようやく割賦販売法が改正となり、EMV化の、特にアクセプタンス側のインフラの部分が動き出すので、大きなパラダイムシフトになると思います。インバウンド顧客が増えてきた場合でもリスクプルーフができ、より安全な決済環境が提供できる。これは我々にとって目指しているところです」と説明する。
2016年リオオリンピックでは、Visaがスポンサー契約を結ぶアスリートに「Visa payWave」対応の指輪型ウェアラブル端末を配布したことが話題となった。来たる2020年には一歩進んで、「Visa payWave」を日本でも当然利用できると疑うことなく訪れる、多くの人を迎えることとなる。日常生活で使っている決済の方法が日本でもそのまま使える環境を提供することも、大切な“おもてなし”であろう。
小売決済ネットワークのシステムをオープンプラットフォームに
アジアではシンガポールにデベロッパー・センター開設
ところで、店頭に足を運んで端末で決済をするという今までの主流の世界から、次世代の新たなインターフェースが生まれ始めている。最たるものがIoTだ。今後は、様々なモノ自体に、場合によってはカード番号に近い情報が入っていくと考えられる。また、人工知能(AI)に基づいて単純な処理を実行できるチャットボットの、支払い機能への対応も挙げられる。ソフトウェアやアプリケーションのデベロッパーには当然、そうした画期的なアイデアを実現する際に安心・安全な決済を搭載することが求められる。
Visa が2016年2月に立ち上げを発表した「Visaデベロッパー」は、小売決済ネットワークのシステムをオープンプラットフォームへと移行する画期的な試みだ。決済とコマースの革新のスピード向上を狙いとし、Visaが提供する技術やサービスに、デベロッパーが自由かつ迅速にアクセスできるようになった。
「Visaが構築して提供する時代から、Visaがちりばめた多様なツールやプロダクトから上手く組み合わせたりしてビジネスに使ってください、という考え方に変わってきています。Visaのネットワークや取引データを使い、アイデア次第で様々なことができるという環境です」と、新技術推進部 ディレクター 福谷大輔氏は語る。
また、2014年にサンフランシスコに開設されたフラッグシップ・イノベーションセンター「One Market Center」の成果を受け、AP地域では2016年4月、シンガポールにイノベーションセンターを立ち上げた。ワークスペースに常駐するVisaの技術者やビジネスリーダーとともに、地域内のデベロッパー等が新しいソリューションを共創するための窓口となっている。
「1つの例ですが、ナショナルオーストラリア銀行様はこのセンターでのコ・クリエーション(Visaとパートナー様共同で実施するビジネス創出プロジェクト)で、顧客向けモバイルバンキングアプリを2日でプロトタイプまで創り上げてしまいました。事前に経営課題などのさまざまな問題点をブレストしておいていただき、それをVisaのエキスパートにぶつけていただいてやり取りをすることで、わずか数日で新しいソリューションを創る。今までの開発では考えられない速さで濃い内容のデリバリーができるのが『Visaデベロッパー』です」(福谷氏)
実は、日本向けのソリューションもすでに動き出しているとのこと。「ひょっとしたら今年中には、さまざまなカード会社様がこうした機能を使って何か出してくるかもしれません」と、鈴木氏は笑顔で教えてくれた。
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