南海電気鉄道

駅窓口にモバイル決済サービス「Alipay」「WeChat Pay」を国内初導入
中国人観光客の利便性向上、駅係員の負荷軽減を実現

南海電気鉄道(南海電鉄)は、2018 年7 月14 日から、中国のモバイル決済サービス「Alipay」と「WeChat Pay」を一部の駅窓口で導入している。同対応により、中国人観光客が駅窓口で特急券などのきっぷを便利に購入することができるとともに、駅係員の負担軽減にもつながった。今回の導入は、両決済サービスを駅窓口で販売する日本初の取り組みとなった。

モバイル端末の画面を駅務機器と連動
係員は金額の二度打ちなく処理が可能に

南海電鉄は、関西国際空港へのアクセス路線である「空港線」があることから、近年の訪日外国人旅行者の急増を受け、輸送人員の増加が続いている。同社の調査によると、関西国際空港駅の約半数は外国人の利用だ。中国人旅行者をはじめ、韓国、台湾、香港からの旅行者が多数を占める。

南海電鉄 鉄道営業本部 統括部 課長補佐 藤原隆行氏

南海電鉄では、従来、定期乗車券とWeb特急券のみで取り扱っていたクレジットカード決済サービスを、2015年3月28日から、乗車券、特急券などでも取り扱うとともに、銀聯決済の取り扱いを、難波、新今宮、天下茶屋、りんくうタウン、関西空港、高野山の各駅で行ってきた。南海電鉄 鉄道営業本部 統括部 課長補佐 藤原隆行氏は、「当時、外国人旅行者とのやりとりが駅係員のストレスになっている現状があったため、まず、クレジット決済、銀聯の対応を開始しました。銀聯を導入した当時、すでに中国国内でスマートフォン決済も広まっていましたので、同時に検討を始めました」と説明する。

そして、2018年7月14日から、決済システムを刷新し、上記の6カ所の駅で、「Alipay」「WeChat Pay」を導入している。今回は新たに、利用者のモバイル端末の画面を、駅務機器(窓口端末機)と連動させ、モバイル決済専用端末で読み取って決済する方法を導入した。

銀聯の取り扱い時は、共同利用端末(CCT端末)に金額を手入力する形であり、特急券の販売端末を別途操作しなければならず、手間がかかるだけでなく、金額入力の誤りが懸念されていた。「Alipay」「WeChat Pay」の導入では、オペレーションの簡略化に向け、POS端末と決済端末の金額を連動する仕組みを採用。藤原氏は、「金額は、特急券を販売するPOS端末を操作することで、『完了』ボタンを押せば、決済端末に連動するため、金額の二度打ちは必要ありません」とシステム変更のメリットを述べる。決済時には、決済端末に接続したバーコードスキャナで読み取りを実施。中国人の多くが利用する「Alipay」「WeChat Pay」に対応したことで、駅係員の窓口業務をよりスムーズに行うことができるようになった。なお、同様に、クレジットカード決済も以前からPOS端末で操作できるようにしている。

駅窓口でのモバイル決済のイメージ

個人旅行者の増加に期待
駅での露出もさらに強化へ

導入後の状況として、関西空港の中国人旅行者は、海外の旅行エージェントが特急券も合わせて販売しているケースも多いため、まだまだ利用者は限られるという。今後、個人旅行者がさらに増えると、利用率は高まると想定している。また、利用者の「WeChat」などでの口コミでの浸透に加え、駅での露出も強化していく方針だ。

電鉄会社の駅窓口でいち早く中国のモバイル決済に対応したため、同業他社からの反響も多く、注目を浴びている実感があるという。今後は、他の電鉄会社での採用が増えることで、中国人観光客の認知度もより一層高まると期待した。

なお、韓国や台湾からの観光客は個人旅行者も多いが、駅窓口ではクレジットカード決済を中心に、特急券を便利に購入されているそうだ。

駅窓口以外での対応も視野に
商業施設ではモバイル決済を導入

関西では、1枚のカードで関西エリアのほとんどの鉄道・バスを利用できる訪日外国人観光客限定の関西統一交通パス「KANSAI ONE  PASS」が好評であり、乗車券が便利に利用できる環境は整ってきたが、今後は特急券を不便なく購入して、利用できる環境を整えていきたいとした。現在は、6カ所の駅で特急券の購入が可能だが、「駅窓口以外でも状況をみながら、対応を広げていくことを視野に入れています。また、駅係員を介さずに、ウェブなどを利用して、お客様自身で、便利に購入できる環境を目指していきたいですね」と藤原氏は意気込む。さらに、券売機の外国語は4言語に対応するなど、利便性向上を図っている。

なお、南海電鉄では、ショッピングセンター「なんばパークス」および「なんばCITY」においても、2018年4月26日から「Alipay」と「Origami Pay」、2018年7月16日から「WeChat Pay」を導入している。ショッピングセンターでは、先行して導入した「Alipay」が2~3%の利用率を占める。また、「Origami Pay」も導入時にキャンペーンを行うなど、利用促進を図っている。現在は国内のプレイヤーが乱立している状況であり、「Origami Pay」の南海電鉄の駅窓口での導入は未定だが、日本のスマートフォン決済サービスの動向は引き続き注目していきたいとした。

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