「タワレコ店舗アプリ」の導入でカードレス化を実現
お得な情報の配信で店舗への誘導とECの活性化につなげる
大手CD ショップチェーンのタワーレコードは2018 年4 月、実店舗での買い物を便利にする公式アプリ「タワレコ店舗アプリ」をリリースした。会員証とクーポン、イベントやキャンペーンの情報提供というシンプルながらも顧客のニーズに沿った機能が受け、配信後10 カ月で約25 万ダウンロードを達成。売り上げアップにもつながっている。
会員証をアプリで提示してレジ時短
年間約8,000件の店舗イベントを効果的に配信
「タワレコ店舗アプリ」は、会員証や割引などのクーポン、アーティストのミニライブやサイン会といった店舗で行われるイベント情報の提供機能などを盛り込んだ公式アプリだ。ダウンロードは無料で、iOSとAndroid両方のOSに対応している。
同社は会員カードも提供しているが、スマートフォンに会員証機能を搭載したアプリをダウンロードしておけば、カードを持ち歩いたり、レジでカードを探したりするわずらわしさから解放される。カードを紛失してしまう心配もない。同社が加盟するNTTドコモのポイントサービス「dポイント」のデジタルカードも表示することができる。
同社リテール事業本部 リテール管理統括部 店舗管理部 部長 小野寺慶祐氏は、「お客様から『会員証を忘れたと思っても、アプリにログインして使うことができた。便利になった』といったお声をいただいております」と話す。会員証のバーコードはクーポン画面にも表示される仕様のため、レジでの会計時間を短縮することができ、店舗業務の効率化にもつながっている。
アーティストとのつながりが深いタワーレコードならではの機能が、年間約8,000件開催されるという店舗イベント情報の提供だ。アプリを起動すると一番上に表示される「タワレコ・ギャラリー」には、店舗で行ったミニライブやサイン会などの際に訪店したアーティストの様子を掲載。よく利用する店舗をお気に入り登録すれば、その店舗のイベント情報をまとめて閲覧できる。
実店舗での集客ツールとしてアプリを開発
既存モジュールの利用でコスト削減
同社によると、会員証機能などを盛り込んだ本格的なアプリの提供は、今回が初めてだという。小野寺氏は、「スマートフォンなどのアプリが社会的に認知される中、当社としてもいろいろな集客ツールとして使えるのではないか、という声が社内で上がっていました」と経緯を述べる。
同社の株主でもあるNTTドコモのグループ企業、ロケーションバリューが提供するアプリ開発サービス「ModuleApps(モジュールアップス)」を利用して開発を実施。既存のモジュールを組み合わせて作った結果、イニシャルコストが抑えられた。
当初はECサイトへのリンクはなかったが、「ECサイトへのリンクを作ると、お客様にECサイト(tower.jp)のアプリ版としての印象を与えてしまうかもしれない、ということも考慮して、いったんは店舗集客をメイン機能としました」と小野寺氏は理由を説明する。
その後、アプリのダウンロード数が順調に伸び、店舗アプリとしての機能も十分にご理解いただけた段階で次のフェーズとしてECへの送客を見込み、アプリ内にECサイトへのリンクを作ったが、これによりECでの売り上げも順調に伸び始めている。なお、アプリとサイトとを区別するため、リンクを押すと、ウェブへの遷移に同意を求めるダイアログボックスが開くように工夫もしている。
実店舗からECサイトへの流入が増加
ユーザビリティと業務効率化の両立へ
アプリのダウンロード数は当初、1年間で15万件ほどを見込んでいたが、現在、予想を大幅に上回るスピードで伸びている。小野寺氏は、「アーティストのおかげでもありますが、コンテンツに魅力を感じていただいているのかなという印象もありますね」と話す。
同社は会員向けに、eメールでもクーポン付きのダイレクトメールを配信しているが、利用者数の違いはあれ、アプリのみで配信したクーポンの方が利用率が高いという。キャリアメールをあまり読まないという顧客向けにも有効な手段のようだ。
また、アプリからECサイトへの流入も順調に増えている。小野寺氏は、「特定の小売企業のサイトをブックマークする方はなかなかいらっしゃらないと思いますが、アプリはインストールさえしていただければ、リンクを押すだけでECサイトにたどり着けます。有効活用したいです」と意欲を示す。
今後は、ECサイトの利用者に注文の受付や入荷といった商品の手配状況を知らせるトランザクションメールの管理などアプリとECサイトとの連携強化や、イベント情報を見やすくするなどの改善も検討していきたいという。
アプリと決済手段との連携も検討している。同社は商業施設にテナントとして入っている店舗がほとんどのため、決済方法はディベロッパーと協議する必要がある。小野寺氏は、「お互いにメリットがあり、お客様にご迷惑がかからない手段を検討していきます」と語った。