キリン堂

多彩な決済導入で目標前倒しでキャッシュレス比率50%超に

自社電子マネー付きポイントカード「KiRiCa」をCRMに生かす

関西を中心に約370店舗のドラッグストア・薬局を展開するキリン堂は、クレジットカードや電子マネー、スマートフォンでのQR/バーコード決済など多彩な決済方法を導入している。キリン堂グループのドラッグストアにおけるキャッシュレス決済比率は、2020年1月末時点で57%。経済産業省が2025年までの目標として掲げた40%をはるかに上回っている。

キリン堂 営業推進室長 須佐美 友彦氏

キャッシュレス決済比率が急上昇
電子マネーKiRiCaの利用は25%に

キリン堂グループでは、顧客の利便性向上の取り組みとして、幅広いキャッシュレス決済への対応を進めてきた。現在、グループのドラッグストアでは、中国銀聯を含むクレジットカードのほか、「iD」や「Apple Pay」、交通系ICなどの電子マネーに加え、「PayPay」や「LINE Pay」、「d払い」、「楽天ペイ(アプリ決済)」、「メルペイ」といったQR/バーコード決済を利用できる。

また、2018年からは、富士通エフ・アイ・ピーの「サーバ管理型電子マネーサービス」を利用した自社電子マネー付きポイントカード「KiRiCa(キリカ)」を導入。グループ独自の現金チャージ式電子マネーとポイントカード機能を一体化し、電子マネーを利用した場合は通常よりも多くポイントが付くようにした。

こうした取り組みの結果、キャッシュレス決済の利用は伸び、消費増税前の駆け込み需要があった同年9月には55%と、目標としていた2020年を前倒しする形で50%を突破した。2020年1月末時点のキャッシュレス決済比率57%の内訳は、キリカが25%と最も多く、クレジットカード20%、QRコード決済7%、キリカを除く電子マネー5%。キリカの利用が増えると、手数料率が全体的に引き下げられるという効果もある。

電子マネー機能付き「KiRiCa」

キリカはターゲットを絞ってPR
スマホ決済は14種類を導入

自社電子マネーのキリカは、どのようにして顧客に浸透していったのだろうか。キリン堂によると、2018年夏の導入当初は、ターゲットを売上高の大きい客に絞って、店頭やDMでのPRを進めた。キリン堂 営業推進室長の須佐美友彦氏は「かなりのスモールスタートでしたが、分析の結果、キリカを利用されたお客様は圧倒的にお買い上げ点数が増えました。(前のポイントカードからの)切り替えコストを吸収できるぐらい月間の購入単価が上がったので、ほかのお客様にも広げていきました」と説明する。

2019年10月にはキリカの機能も搭載したアプリをリリース。現在は月間アクティブユーザーが30万人近くになっている。電子マネーの利用も好調で、「チャージキャンペーンを張ると、総額で数億円規模のお金が使われずにカードにプールされます。これらのチャージ金は弊社で優先的に使っていただけますので、販促に役立っていますね」と須佐美氏は笑顔を見せる。

また、2019年11月から取り扱いブランドを拡大したQRコード決済の利用が伸びている。顧客がスマホに表示されたQRコードをかざすCPM方式により主要な決済手段を追加できる仕組みを導入し、現在、対応できるQRコードは14種類に上る。当初はユーザーの端末でQRコードを読み取るMPM方式を導入していた決済手段もあったが、顧客が金額を入力するといった行為がなくなり、レジの集計面でもプラスとなっている。

須佐美氏は「スマホ決済には集客面でかなり期待しています」と話す。「決済のアプリにキリン堂のロゴを載せるだけでも、広告効果はあります。そこから店舗を利用されたお客様のうち、数%でも自社電子マネーに引き込めたらと考えています」。スマホ決済自体も、将来的には10%ぐらいまで伸びると見ている。

自動つり銭機を導入しストレスをなくす
今後はデータを生かした販促も

キャッシュレス決済に力を入れる同社だが、2020年夏をめどに、POSレジと連携し、自動で現金の入出金を行う自動つり銭機を全店で導入する。お客様のレジ待ち時間をより短縮し、快適な購買体験を提供するためだ。また、同時に店舗スタッフがレジで現金を扱うストレスをなくし、スタッフの満足度をアップする効果も期待できる。須佐美氏は「極限まで現金のストレスを減らそうと思っています」と話す。

同社は今後も、スマホ決済の追加や自社電子マネーの拡大といったキャッシュレス化を進める。また、データの活用にも力を入れる。ドラッグストアの顧客のうち約75%が会員化されており、決済方法や客単価などの傾向がつかみやすいからだ。

「例えば、スマホ決済でヘルス商材を多く買っていただいているお客様に限定してクーポンを出すなど、ターゲットを絞った販促に生かしたいです」と須佐美氏。購入内容などを分析し、それぞれの顧客に合った販促につなげる。

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