サツドラホールディングス

2021年3月9日

道内全域で使える地域通貨の展開を構想、実証実験に手応え
サツドラ200の店舗網と193万人の「EZOCA」ユーザーが基盤に

サツドラホールディングスグループでは、北海道を中心に約200店のドラッグストアを展開し、約193万人の会員を擁する北海道共通ポイントカード「EZOCA(エゾカ)」を運営している。同社は、道内の企業や自治体などと広く手を組んで、新たに北海道内全域で使える地域通貨を発行・運用し、地域経済を活性化する構想を描く。この実現に向けて、2020年秋からDataGatewayと共同で、ブロックチェーン技術を活用した決済システムの実証実験に取り組み、技術検証を実施、実効性を確認するに至っている。近い将来には、地域通貨を道内で還流させながら、インバウンド需要も取り込んで、北海道の魅力を国内外に発信していく体制を整えたい考えだ。

中央がサツドラホールディングス 代表取締役社長 富山浩樹氏、左がサツドラホールディングス インキュベーションチーム 高橋幸裕氏、右がDataGateway 代表取締役社長 向縄嘉律哉氏

実験で重視したのはシステムの堅牢性
道内全域カバーの地域通貨を構想

決済システムの実証実験は、Stake Technologiesが開発した国産ブロックチェーン「Plasm Network」を使用し、DataGatewayが独自開発した分散型ファイルシステム「3Cloud」の技術を応用して、クラウド上の複数のサーバに重要なデータを分散保管。この仕組みにより、仮にサーバの1つがサイバー攻撃を受けて不具合を生じても、システムを停止させることなく運転を続けられ、流出したデータは復号不可能で悪用することはできないという。

流通業が主導してこういった実験を行うケースは珍しい。まずシステムありきでなく、サツドラの決済データをブロックチェーン上にどう載せていくかを前提に設計を行う必要があったため、技術的なハードルは決して低くなかったという。今回の実証実験は数店舗規模で行ったが、実際の展開になれば少なくとも200万人の利用が見込まれるため、最も注視したのはシステムの堅牢性だった。ひと通り実験を終え、期待通りの結果を得ることができたと両社は評価している。

サツドラホールディングスがこの実証実験の先に見据えているのは、北海道全域で利用できる地域通貨の発行・運用だ。人口減少による国内マーケットの縮小で、何も手立てを講じなければ日本経済は先細りになることが目に見えているが、「中でも北海道は“課題先進地域”。どこよりも速く高齢化、人口減少が進んでいます」(サツドラホールディングス インキュベーションチーム 高橋幸裕氏)。とはいえ北海道は、観光資源をはじめとして大きなポテンシャルを持っており、国内外に向けてのブランド力も高い。地域通貨を道内で還流させ、インバウンド需要も積極的に取り込むことによって、地域経済を活性化させたいというのが同社の想いだ。

同社は道内に約200の店舗網を持ち、グループ会社のリージョナルマーケティングが運用する北海道共通ポイントカード「EZOCA」の会員数は約193万人で、道内世帯数の約7割をカバーしている。このインフラをベースに、新たな地域通貨を広げていく計画だ。通貨というからには公共性、中立性が重要。高橋氏は「この構想は北海道全体を発展させるものであり、各方面と共同で立ち上げていく必要があります」と説明する。

ポイントカードの「EZOCA」のラインナップには、サッカーJリーグの北海道コンサドーレ札幌を応援する「コンサドーレEZOCA」やバスケットチームのレバンガ北海道を応援する「レバンガEZOCA」などがあるが、地域通貨にも道内各地の活動を道民全体で応援できるような価値を付加していきたい考えだ。

サツドラの地域通貨導入のケイパビリティ

本人確認機能で幅広いサービスに対応
マイナンバーカードとの連携視野に

両社は今後、地域通貨への本人確認機能搭載についての検討、実験を進める。本人確認を経ることによって、給与支払いや行政サービスなどにも地域通貨の利用が広がる。

モデルは、エストニアのID制度だ。DataGateway 代表取締役社長 向縄嘉律哉氏は「サツドラの店頭でも、金融機関や行政の窓口でも、どこか1カ所で本人確認を済ませれば、民間や行政のさまざまなサービスが利用できるという体制を整備したいと思っています。本人確認はオンラインだけではなかなか完結できなかったりするので、サツドラ200店の店舗網が有効に機能すると考えています」と構想を述べる。

安定性やコスト面を考慮し、マイクロソフトの技術を元に新たなデジタルアイデンティティ基盤を開発しており、マイナンバーカードとの連携も視野に入れているという。

 

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