2021年3月9日
CAFIS Archが描くPoT(Payment of Things)の世界観とは?
NTTデータは、よりよい購買体験と決済の変革を実現するCAFISのリテール向けソリューションを強化し、店舗への実装やサービス提供を加速する。クラウド型総合決済プラットフォーム「CAFIS Arch」を中心に、同社の決済ソリューションを活用し、決済によって生まれる断絶をなくし、シームレスな購買体験を実現する「PoT(Payment of Things)」のコンセプトを掲げている。CAFIS Archは2015年サービス開始後、すでに多くの業界・店舗に導入されており、消費者のさまざまな利用シーンで実績を積んでいる。同社は消費者の購買体験に着目し、単なる決済ソリューションの提供だけではなく、店舗、ECなどの決済を起点とした購買体験の向上にも意欲的に取り組んでいる。
決済実装の知見と実行力を武器に
店舗のデジタル化推進
NTTデータのITサービス・ペイメント事業本部カード&ペイメント事業本部 課長 冨田誠氏は「OMO(Online Merges with Offline)やCX(顧客体験)、EX(従業員体験)は店舗経営が目指すべきキーワードだが、私たちは体験の起点となる決済を含めてどう実装するのか、実行まで踏み込むことが重要だと考えています。それらをいち早く体現できるのは、NTTデータが提供しているCAFISのリテール向けソリューションです」と説明する。
店舗デジタル化の目指す姿を実現していく気持ちを、IoT(Internet of Things)にならって造った言葉「PoT」に込めている。冨田氏は「PoTはコンセプトとして掲げる造語ですが、商標登録も済ませました。決済も利用シーンに溶け込ませ、すべてのものがつながっていく世界観の中で、『消費プロセスにおいて、決済によって生まれる断絶をなくし、シームレスな購買体験を実現していく』ことを念頭にサービス開発に取り組んでいます」と話す。
リテールソリューションの原動力となるのが、NTTデータのクラウド型総合決済プラットフォーム「CAFIS Arch」だ。クレジット決済からインバウンド向け決済やQRコード決済まで、国内で利用できるあらゆる決済を加盟店に提供する。豊富な端末ラインナップでさまざまな決済シーンに対応可能な、国内で屈指のキャッシュレス決済プラットフォームである。
CAFIS Archの最大の特徴は、豊富な端末ラインアップとクラウド型決済サービスの拡張性を兼ね備えていることだ。端末は、据置型、モバイル型、ハイブリッド型、スマートデバイス連動型、POS連動型を加盟店のニーズに合わせて使うことができる。一方で、CAFIS Archセンタは、マーケットプレイス、銀聯決済、電子マネー、クレジット決済、TAX FREE(免税)、バーコード決済、ポイントなどさまざまな機能を活用できる。アプリケーションとデバイスの連動が新たな購買体験の実現をサポートする。
豊富な端末の中でも、多機能のオールインワン端末が揃っているのも強みだ。バーコードカメラ、非接触ICリーダライタ―、磁気リーダ、ICリーダとさまざまな機能を1台に凝縮。商業施設、旅行代理店、スーパーマーケット、ブランドショップ、飲食店、アパレルなどさまざまな業種・業態に導入されており、レジ端末としてだけではなく、あらゆる決済シーンに対応している。
PoTのコンセプトが体現するのは、決済の分散化と店舗のデジタル化だ。
決済の分散化とは、決済をレジから開放し、顧客にとって価値のあるかたちで、あらゆるところで、決済を可能とすることを指す。購買体験にあわせたさまざまな決済で、カスタマージャーニーに応じた決済を提供するのが狙いだ。
例えば、レジに並ぶことなく購入できるセルフ決済や、決まった商品やちょっとした商品をその場で購入できる棚決済、外販やデリバリーなど、モバイルで利用できる軒先決済などさまざまなシーンで、便利に使える端末として活躍している。
さらに、冨田氏は「リアル店舗の強みである店員とのコミュニケーションはコンシェルジュ決済を実現します。接客の流れの中に決済を溶け込ませることでその価値はより高くなります」とした。
NTTデータが実現する決済ソリューションの一例を家具店舗で紹介すると、「お客様との商談中に、その場で色使い、大きさ違いなど、類似の商品を検索して案内。ソファーや机など、実際に商品を確認されたお客様に在庫状況をその場で確認。支払い決済は、商談が確定後、レジ待ちを気にせずに、その場で支払い手続きを済ませ、支払い後の配送・組立サービスの手続や、貸出トラックの空き状況も端末で確認できる」と言った具合だ。
冨田氏は「お客様が購入を検討している最中に、在庫確認のために店員がバックヤードに消え、確認を済ませて戻ってきたと思ったら、決済のために渡したクレジットカードを持って、またどこかに消えてしまう、といったシーンは非常に残念。当社のソリューションはAndroidベースで動く多機能端末を使っているため、店舗の業務アプリなどをオールインワンで活用するなど、お客様にとって嬉しいカスタマージャーニーを描きやすいです」と話す。
カスタマージャーニーから
新たな顧客体験を描く取り組み
NTTデータは2019年度に、試着した商品をその場で購入できる「試着室内セルフ決済」の店舗実証を行っている。CAFIS ArchによるDXを通じて、新たな顧客体験を描く取り組みである。
試着室で決済まで完了させる仕組みで、ポイントは、試着して、商品を持って、わざわざレジに並ぶという残念な体験をさせないことだ。持ち込んだ商品をRFIDで読み込み、その場で購入できる。冨田氏は「もともとソリューションを用意していたわけではなく、カスタマージャーニーの洗い出しから検討を進めました」と話す。
具体的には、カスタマージャーニーの動線上で不都合が見つかった「試着室」を省人化するだけではなく、ボタン一つで店員を呼び出して、別の商品を届けてもらったりできるといった、お客様に寄り添ったサービスの提供を描いた。従業員の体験としても、レジ業務から解放され、その分を接客サービスなどのより価値の高い業務に集中してもらうことを狙いとした。冨田氏は「この試着室内セルフ決済の取り組みについては、利用者、従業員の双方からポジティブな反応があり、レジから決済を解放する取り組みには価値があると感じた」と話す。
「店舗のデジタル化は、決済を起点にその前後の体験の状況データを取得・活用し、店舗での購買体験を向上させていくことが重要です。デジタル化は目的ではなく、決済を起点とした体験のなかで、いかに価値を提供できるかがポイントです」と冨田氏は言う。
状況データとは、ある場面ある状況の断面によって取得できるデータのこと。決済を起点として、その前後のカスタマージャーニーから「状況データ」を取得する。「人」の価値観・行動は状況により変化するため、自然な流れの中で収集することが極めて大事になるという。
「その際に、決済は消費者とのタッチポイントとしてすごく使いやすい。購買体験の中に溶け込ませることで、その断面で取得したデータは、一般の統計データ以上に価値があると考えています」(冨田氏)
例えば、購買意欲が高まり、試着室に持ち込んだにもかかわらず、購入しなかった商品の情報を取得できる。こうした「非購買データ」は、なぜ買わなかったのかという理由を探す糸口になる。単なる商品情報では過去しかわからないが、状況を加えると未来を探るきっかけになるからだ。
オンラインとリアルを融合させた
購買体験の提供を目指す
リテール経営は、コロナ禍で加速するニューノーマルに対応した、さらなる顧客価値向上にも取り組まなければならない。市場の変化や消費者の行動変化は、コロナ禍が拍車となって急速に進み、店舗がOMO「Online Merges with Offline」に対応していくことの重要性は、これまでよりも増している。
リテール経営の革新はすでに始まっている。IoT製品を展開する米国の小売りチェーン「b8ta(ベータ)」は、出展者が店舗に商品単位で出品。ショールーム的に小品展示しており、消費者はECを通じて購入する仕組みだ。米ウォルマートは、消費者は好きな時間にネットで注文し、都合に合わせて店頭で試着して持ち帰るサービスを始めている。
NTTデータでは、消費者が店舗・ECを意識せず、どこでも買い物できる仕組みを提供することが店舗の優位性確保につながる」と分析する。ウイズ・コロナでの気づきは、消費者がオンラインとリアルの良さを体感したことであり、今後はオンラインとリアルを融合したベストミックスな購買体験の提供が必要となる。
NTTデータとしては、消費者がオンラインとリアルを行き来する、継ぎ目のないシームレスな購買体験を目指す。例えば、オンラインでほしい商品を検索し、リアル店舗の在庫を確認、取り置きする。そして、リアル店に来店し、質感、色見を確認し商品を購入、店員は消費者の過去の購入情報から、嗜好を把握し、さらなる提案を行う。その後、オンラインで悩んだ挙句に購入を見送った商品のクーポンや紹介記事がオンラインに届く。さらに、リアル店に来店し、店員はコーディネートに会った追加購入を提案する…。このように、オンラインとリアルを組み合わせ、消費者の状況に応じてベストな購買体験を自然に提供することが重要になるというわけだ。
その発想からNTTデータは、シームレスな購買体験を実現する新たなソリューションとして、「インテリジェントミラー」を企画中だ。
インテリジェントミラーは、アパレル店に設置するデジタル化された全身用ミラーで、通常の鏡としても利用できるだけでなく、試着確認から決済完了まで一連の購買体験の提供や、利用客との新たなOMOのタッチポイントデバイスとしての活用も可能である。スマホを取り出して、画面操作をする、といった面倒な行動を増やすことなく、通常の購買の動線上に、自然に存在し、鏡の前で商品を当てて試すという行動のなかに溶け込む形で利用してもらうことが狙いだ。冨田氏は「シームレスな購買体験を実現するために、利用者にとって自然であること、便利であることが非常に重要。オンライン、リアルのカスタマージャーニーから、決済を起点とする阻害要因を洗い出し、解消することで、顧客に価値のある体験を提供していきたい」と意気込みを見せた。
■お問い合わせ先
株式会社NTT データ
IT サービス・ペイメント事業本部
カード&ペイメント事業部
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