- 2018-8-19
- 1章
2016年3月10日8:05
安心・安全な日本に向け、多くの決済サービス・セキュリティ対策が提供される
2020年の東京五輪に向け、国内でもさらにキャッシュレスな決済が加速していくと思われる。また、カード決済環境の整備による地方創生も期待される。それと同時に、安心・安全な決済インフラを整えることも重要だ。まずは、国内の主要な決済やセキュリティ対策について概観したい。
国内でも非現金化は年々進む
インバウンド対応も進められる
国内でも後払いの「クレジットカード」、前払いの「プリペイドカード」、即時払いの「デビットカード」のすそ野は順調に広がっている。例えば、クレディセゾンの2015年第2四半期決算発表資料によると、2014年度の民間最終消費支出285.7兆円に占める「現金」の割合は51.9%。「クレジットカード」は15.0%、デビットカードは0.2%、プリペイド・電子マネーは4.7%となっている。前年比で、クレジットカードは+1.2%、プリペイド・電子マネーは+0.9%となっているように、順調に市場規模は拡大している。
クレジットカードに関しては、これまで利用が限定的だった新領域での導入も進んできた。例えば、従来、口座振替や振込が多かった家賃、公金、医療、教育などでカード決済を導入するケースが見受けられる。
また、インバウンド対応での決済環境の整備も加速。日本政府観光局の発表によると、2015年の訪日外国人旅行者数は約1,974万人、2016年は2,350万人程度まで伸びると予測されており、2020年までの3,000万人達成も見えてきた。
2014年6月24日に閣議決定された「日本再興戦略」改訂では、①訪日外国人向けの利便性向上、②クレジットカードなどを消費者が安全に利用できる環境整備、③公的分野の効率性向上の観点から電子決済の利用拡大――からなる、キャッシュレス決済の普及による決済の利便性・効率性向上を図るための対応策が取りまとめられた。
一方で、海外では「日本ではクレジットカードに頼らないことが得策であり、現金を持って歩くのが基本原則」と報じられたように、日本ではクレジットカード決済が利用できない店舗も多い。その対応として、都市部だけではなく地方での決済環境を整備するために、地方創生予算を活用して決済端末導入補助の取り組みが行われている。
インバウンド対応として、「UnionPay(銀聯)」決済の導入も進んでいる。銀聯は、2002年の設立以来、急成長している国際カードブランド。加盟店は、中国が1,700万カ所、中国国外が1,700万カ所となり、うち日本は約40万カ所となっている。現在、利用可能国は150カ国以上、カード発行国数は40カ国。加盟店によっては、銀聯カードの利用単価が他のカードよりも高い傾向が表れている。
ブランドデビットの認知が進む
地方銀行では、スマートフォンと連携したサービスも
デビットカードは、加盟店での決済時に金融機関の預金口座を照会し、即時に引き落とすカードサービスである。国内では、日本デビットカード推進協議会が運営する「J-Debit」のほかに、VisaやMasterCard、JCBなど、ペイメントカードの国際ブランドが提供する「ブランドデビット」がある。
ここ数年は、VisaのテレビCMの効果などもあり、国際ブランドが提供するブランドデビットへの注目が集まっている。ブランドデビットは、VisaやMasterCard、JCBの加盟店網を利用し、世界中の加盟店で利用できるのが第一点。また、カード発行時は、原則として審査・与信がなく、クレジットカードを持てない若年層、高齢者なども所有可能だ。クレジットカードは使いすぎのリスクがある等の理由で持ちたくない、また何らかの理由で持てない人もいるが、ブランドデビットは幅広い加盟店で、現金と同じ感覚で利用できるメリットを訴求しているイシュアも多い。
ブランドデビットの発行は、当初はネットバンクが中心だったが、メガバンク、地方銀行などでも発行が進んできた。また、福岡銀行や北國銀行など、スマートフォンアプリと連携し、生活密着型のサービスを掲げる銀行も出てきた。
地方スーパーマーケットにも広がり始めたプリペイドカード
リアル店舗で利用できるブランドデビットの種類も増加
サーバ管理型のプリペイドカードは、オンライン上のサーバでバリューを管理しネットワーク経由でサーバにアクセスし、金額をチャージ(入金)する仕組みだ。
近年では、自社独自の「ハウス電子マネー」として発行を強化するケースが増えている。ハウス電子マネーの利用者は、非利用者よりも来店回数が多い企業が多く、月間の買い上げ金額アップに貢献している。つまり、来店回数が多い優良顧客を中心に積極的に利用されている傾向にある。
また、テレビCMでも見かけるようになった、「POSA(InComm’s Point of Sales Activation)」をはじめ、顧客のカード購入と同時にPOSレジでカードに金銭的価値の付与、カード発行企業の販売網の構築、販促施策の実施などを行う「ギフトカードモール事業」は家電量販店、コンビニエンスストア、ドラッグストアなどですっかり定着した。
ブランドプリペイドを発行するカード会社も増えてきた。ブランドプリペイドは、ブランドデビット同様にVisaやMasterCard、JCBといった国際ブランドのネットワークをそのまま活用できるのが特徴だ。2013年までは、「バニラVisa」、「V@PreCa」、「e-さいふ」など、インターネット上での利用、海外のみで利用できるカードが中心だったが、リアルでもネットでも利用できるKDDIの「au WALLET」開始のインパクトは大きかった。また、2015年以降も「アクアカード」(コメリ)、「ソフトバンクカード」(ソフトバンク・ペイメント・サービス)、「EPiCA(エピカ)」(遠州鉄道)、「ANA VISAプリペイドカード」(全日本空輸)など、カード会社と連携してブランドプリペイドを発行するケースが見受けられる。
少額決済で多く利用される電子マネー
ポストペイはドコモ、JCBが力を入れる
非接触電子マネーの動向をみると、楽天の「楽天Edy」、セブン&アイ・ホールディングスの「nanaco」、イオンの「WAON」、「Suica」等の交通系電子マネーには、ソニーの「FeliCa」カードが採用されている。「WAON」と「nanaco」は、ポイントサービスなど、グループの販促活動にも有効活用することで、利用が伸びている。「楽天Edy」でも「楽天スーパーポイント」を絡めた販促施策を積極的に展開。「Suica」は、全国展開しているチェーン店、ゲーム機、機内販売、観光地などに代表される新しい領域への営業を強化しているという。
近年では、地域のプレミアム商品券をカード型で展開するケースもある。将来的には、ICカードのマルチアプリケーションを生かし、決済以外の領域へのさらなる活用も期待される。例えば、一部の交通系カードやWAONカードには複数のアプリケーションを搭載可能な「FeliCaポケット」の機能が搭載。香川県高松市の「めぐりんWAON」ではさまざまな用途に利用されている。
また、ポストペイ(後払い)電子マネーの「iD」「QUICPay」にもFeliCa技術が採用されている。ドコモでは、2015年12月1日から、ポイントを貯める・使うための専用カード「dポイントカード」を発行し、共通ポイントサービスを開始した。また、ドコモの提供するクレジットサービス「DCMX」をリニューアルし、dポイントカードにクレジット決済機能を搭載した「dカード」(ブランドはVisa/MasterCard)の受付を11月20日からスタート。クレジット機能を搭載した「dカード」には、「iD」の機能も搭載した。dカードは、「iD」加盟店でも利用できるため、「iD」の活性化にもつながると思われる。また、バークレーヴァウチャーズの電子食事カード「Ticket Restaurant Touch」(チケットレストラン タッチ)では、ポストペイ方式で推進してきた「iD」を、プリペイド方式にも対応可能とした。これにより、各企業が独自に発行していたプリペイドカードを「iD」の技術を用いて発行できるようになる。
JCBでは、2011年下期から「QUICPay」の発行を再強化しているが、会員残高、売り上げ、利用件数は着実に伸びているそうだ。特に、利用件数や稼働会員数などは想定の2倍程度伸びを示しているという。JCBでは、エクソンモービルの「Speedpass+」、ANAの「ANA QUICPay+nanaco」など、異形状の「QUICPay」を発行することで、会員の携帯率を高め、モバイルと同様に常に肌身離さず持ってもらう取り組みを行っている。