- 2018-9-11
- 2章
2016年3月23日8:00
電子マネーやインバウンド向け各種決済に対応した端末を導入
まちづくり補助金を活用し、商店街ぐるみで決済環境を整備
静岡県を代表する観光スポットのひとつ、沼津港。ぬまづみなと商店街協同組合は、商店街の36店舗にマルチ決済端末を導入し、2015年6月1日からサービスを開始した。クレジットカードはもちろん、各種電子マネーや、訪日外国人向けの決済サービスにも対応している。今回の試みは、平成25年度経済産業省「商店街まちづくり事業」の補助金制度を活用して実現した。
「商店街まちづくり事業」を利用して好条件でマルチ端末設置
個店の取り組みを組合と地元カード会社がバックアップ
ぬまづみなと商店街は、静岡県伊豆半島の玄関口の沼津港エリアにある。駿河湾で水揚げされたばかりの新鮮な海の幸を楽しめる飲食店や、名産の干物をはじめとする魅力ある物産販売店が集結し、県内外から年間推計約180万人もの観光客が訪れる人気スポットだ。伊豆旅行の始まり、あるいは締めくくりとして、沼津港をたびたび訪れる県外からのリピーターも多いという。
同商店街で協同組合を法人化して7年目。組合店を紹介する『ぬまづみなとまっぷ』などを用意してのPR活動や、折々のイベント開催のほか、収益事業として食べ歩きクーポン券の発行なども行っている。商店街では個店単位でクレジットカード決済を導入している店舗はあったものの、インバウンドや若年層など、より幅広い顧客層に気軽に足を運んでもらうため、商店街ぐるみで決済環境を整える取り組みを行うこととなった。
整備にあたり、同組合では「商店街まちづくり事業(まちづくり補助金)」を平成25年度予算に申請し、翌年9月に認可された。地元沼津に拠点を置く日専連ソニックが商店街の各店舗をとりまとめ、三井住友カード、スルガカード、中部しんきんカードとの加盟店契約に基づき36店に端末を導入、運用開始した。
この試みにあたっては、組合員を集めて仕組みや導入メリット等の説明会を開くなどし、地道に啓蒙した。沼津魚仲買商協同組合 専務理事 鈴木学氏は「魚屋の世界は比較的アナログで、今でもファックスでの連絡が多く、新しく端末を入れようにもインターネットの回線が入っていないところも多いんです。だから、そもそもクレジットカードという選択肢がないお店も多かったと思います」と回顧する。
「WAON」など電子マネーへの期待感が端末導入を後押し
インバウンド向けに外貨建て決済や銀聯、NFCも揃える
そんななか、多くの会員が魅力を感じ、導入決定の端緒となったのが電子マネー決済だという。特に、静岡県東部エリアはイオングループの店舗数が多い土地柄のため、消費者として「WAON」を普段使いする会員も多いという。「電子マネーが使えると知ってチャンスだと思ったお店が多いことは事実です。実際、私の店でも『WAON』や『楽天Edy』で決済されるお客様が多いですよ」と、沼津港魚河岸割烹 さかなや千本一 代表 原田武虎氏は頬をゆるめる。
それらプリペイド型電子マネーはもちろん、後払い型の「iD」や、「TOICA」等交通系ICも利用可能だ。また、銀聯や外貨建て決済サービスに対応するほか、世界標準のNFC(Near Field Communication)に準拠した「Visa payWave/MasterCard Contactless(旧PayPass)」も完備。観光客向けにフル装備を揃えて利便性を向上しようと、三井住友カードから提案があったという。これらすべてを端末1台で対応できるオペレーションの簡易さも導入を後押しした。
富士山の世界文化遺産登録や静岡空港の開港を背景に、ここ数年、静岡県でのインバウンド消費は拡大している。ところが、沼津港の客足は残念ながら伸びが鈍い。市内のホテルや伊豆の温泉宿に泊まるパッケージツアーは増加しているが、港湾区まで足が向いていないのが現状だという。ただ、風向き変化の兆しは感じるといい、「最近、台湾や韓国の団体様への説明依頼などが市役所を通じて出てきました。銀聯カードが使えますので、中国の方にもぜひお越しいただきたいですね」と鈴木氏は期待を寄せる。
決済環境整備により、クレジットカード利用率は約30%伸びている。また、組合直営店のデータによると、端末導入以降は1件あたりの客単価が上がり、成果が出始めてきた。土産物はまとめ買いをする客も多く、財布の中身を気にせずに買えるカード決済は親和性が高い。組合各店には、客の入店を後押しするアクセプタンスマークの掲示も促していく構えだ。原田氏は「あそこはどの店でもカードが使えてスムーズに支払いができるよ、と外国人観光客に認識していただき、1つの武器にしたいですね」と思いを新たにする。