クレジットカードは拡大の余地あり
国際ブランドのコンタクトレスペイメントの普及も期待
日本でもクレジットカードが利用できる加盟店は年々順調に拡大している。クレジットカードに関しては、家賃、公金、医療、教育など、利用が限定的だった新領域での導入も徐々に進んできた。また、コンビニエンスストアなどで少額決済での浸透もしつつある。ただし、韓国や米国などに比べると、現金比率が高く、まだまだ市場拡大の余地はありそうだ。
さらに、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催は大きい。日本政府はキャッシュレス決済を広げる取り組みに力を入れている。今後は、Visa payWave(Visa)やMastercard Contactless(PayPass、Mastercard)、American Express Contactless(Express Pay、アメリカン・エキスプレス)、J/Speedy(JCB)など、TypeA/Bベースのコンタクトレスペイメントの普及も期待できるだろう。
そのほか、外国人旅行者の増加も挙げられ、ビザ発給要件の緩和、税制優遇、円安の結果などで、日本を訪れる外国人旅行者が急増した。特にアジアの国々からの旅行者が多く伸びており、この傾向は2020年に向けて続いていくと思われる。たとえば、Visaでは、2017年は表参道、京都、札幌という3つのエリア・都市でインバウンド施策を展開。また、ジェーシービーでは、海外のイシュア(金融機関等のカード発行会社)と協力し、アジアを中心にJCBブランドのカード発行を強化している。さらに、日本の金融機関と協力し、台湾などのカード会員の送客を行っている。
インバウンド決済サービスはモバイルが話題に
Alipay、WeChat Payに加え、銀聯もバーコード決済を開始
アジアからの訪日外国人旅行者の増加に伴い、国内の加盟店で浸透しつつある銀聯に加え、AlipayやWeChat Payなどの導入も増えている。
■銀聯カード
銀聯カードは、現金引き出しにおいて8万カ所以上のATMで使用できる。また銀聯カードが使える加盟店も免税店・百貨店・電気量販店・コンビニエンスストア・ドラッグストアなど50万店を突破するなど、インバウンド決済サービスにとって重要な手段となっている。さらに、コンタクトレスペイメントソリューションの「Quick Pass(クイックパス)」を搭載したカードも発行。QRコードによる決済サービスも発表されている。
2017年からは、銀聯のグローバル展開を手がける銀聯国際が優待クーポンサービス「優計画」の提供を日本で開始。優計画はクロスボーダー送客プラットフォームを通し、顧客をターゲティングした割引クーポンサービスを可能にしている。優計画の導入によって、銀聯カード会員は 銀聯のアプリや提携する銀行・OTA業者のアプリを通じて優計画専用電子クーポンを入手し、サービス導入加盟店で決済の際に電子版コードを提示して銀聯カードで決済すると、その場で優待サービスを受けることが可能だ。
■Alipay(支付宝)
「Alipay(支付宝)」は、ユーザー数は 4.5 億人強、中国国内で200万以上の加盟店で利用可能なサービスである。海外でもクロスボーダー決済、免税、対面決済などのサービスを、70以上の国と地域で10万以上の加盟店に導入している。
Alipayは、O2Oプラットフォームとしての役割も果たしており、たとえばAlipayの機能の1つである預金サービス「Yu’ebao(余額宝)」は、2.5%と高い金利が付き、日時で還元されるのが特徴だ。また、「芝麻信用」は個人の信用をスコア化し、その数値が高い人ほど魅力的な特典が付与される。さらに、Alipayのアプリのトップ画面からジャンルを選択し、利用者が訪問したい店舗を選んで来店すると特典が受けられる、O2Oサービス「Koubei:口碑」をスタートしている。
■WeChat Pay
テンセント(騰訊控股有限会社)のグループ会社であるテンペイ(財付通)が提供する決済サービス。中国で月間8.49億人以上のアクティブユーザーを誇るSNS「WeChat(微信)」のユーザー向け支払いサービスだ。中国でのトランザクション数は1日5億回以上と言われる。店舗のレジでの支払いに加え、レストランや屋台などでは、貼られたQRコードをスキャンするとメニューが表示され、注文および決済が行えるサービスも提供している。さらに、モバイル決済以外にも送金などの機能を有している。利用者は、複数の人にお年玉などを送ることも可能だ。店舗では、WeChatユーザーが所定の場所でスマートフォンをふると、Bluetoothを通じてビーコンから情報が取得できるWeChatの機能「シェイク」を活用したサービスなども行われた。
■DCC
インバウンド向け決済サービスとして、近年、導入が増えているがDCC「(Dynamic Currency Conversion、外貨建てカード決済サービス)」だ。三井住友カード、三菱UFJニコス、ユーシーカードなどのカード会社が積極的にアクワイアリングを行っている。DCCの流れとして、利用者がクレジットカードなどで決済すると、自国通貨を特定する。カードがDCCの対象通貨であった場合、決済時の為替レートなどの情報を得て、決済端末などに決済金額を現地通貨建て、もしくはDCCで換算された自国通貨建ての金額を表示し、カードホルダーはいずれの金額で支払うかを選択する流れとなる。
■新韓(シンハン)ハウスカード
韓国最大のハウスカードであるSHINHAN CARD Co., Ltd.(シンハンカード)発行のハウスカードを利用できるサービス。シンハンハウスカード利用可能のアクセプタンスマーク(シンハンカードマーク)を店頭に掲示し、さらに、シンハンカードがカードホルダーへ加盟店を紹介するため、訪日韓国人観光客の送客効果が期待できる。NTTデータと九州カードが中心となり、国内でのサービスを開始した。当初は訪日韓国人観光客の多い九州エリアを皮切りに加盟店開拓を実施していたが、現在は東京、大阪、広島など全国各地に導入が広がっている。
■台湾金融カードショッピング
北海道銀行、道銀カード、NTTデータは、台湾にある15行の金融機関と日本国内における台湾キャッシュカードの利用促進に関する契約を、2016年3月22日に締結。同契約により、NTTデータが提供するクラウド型総合決済端末「CAFIS Arch」で、同金融機関発行の台湾キャッシュカードによるショッピング取り引きが可能となり、日本全国で台湾キャッシュカードの利用を実現する運びとなる。
クラウド型決済サービスで必要な機能を追加
スマホと連携するモバイルPOSは小型化、高機能化が進む
決済市場の動向をみると、クラウド型決済サービスが登場している。たとえば、NTTデータの「CAFIS Arch(キャフィス アーチ)」は、各種の決済機能をオールインワンで搭載したクラウド型端末だ。
「CAFIS Arch」はクレジット決済、デビット決済、電子マネー決済をはじめとする決済機能や、CLO(Card Linked Offer)、電子サインなどの決済付帯機能を有する。従来の機種依存型端末と異なり、数々の決済機能はセンターのサーバ側で保持・追加更新されていく。加盟店は利用時に端末からセンターにアクセスすればよく、別の決済手段をプラスしたい場合にも手持ちの一台で迅速に対応できる。また、インバウンド向け機能として、銀聯カードや新韓(シンハン)カード、台湾のキャッシュカードでの決済に対応するとともに、多通貨決済にも対応可能だ。
さらに、数年前からスマートフォンやタブレットにイヤフォンジャックやBluetoothに接続するカードリーダーを利用して決済するソリューションが登場している。これらのスマートフォン決済サービスを展開する企業は、主にSMEと呼ばれる中小規模店舗をターゲットとしていることから注目を集めた。国内の主要なカード会社もこれまでアプローチできなかった加盟店に訴求することができるため、新たな市場を開拓できるツールとして期待しているところは多い。また、スマートデバイスを活用したPOSシステムとの高い親和性もある。
スマートフォンと連携する端末も高機能化が進んでいる。磁気や接触ICカードに加え、海外の非接触決済、国内で普及しているFeliCaベースの電子マネーに対応可能な端末をフライトシステムコンサルティングやIngenico Japanなどが展開している。
EC決済市場は後払いの導入が加速、ID決済で大規模な会員を送客
モバイルを活用した送金サービスにも注目
EC市場ではさまざまな支払い手段が登場している。ECでの支払い手段として浸透したクレジットカード以外にも、コンビニ決済、ID決済(ウォレット決済)、携帯キャリア決済、電子マネー、外貨決済など、さまざまな支払い手段を一括して導入可能だ。
日本はコンビニ決済のポテンシャルも高く、「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイが開始した「ツケ払い」など、後払い決済サービスの導入が増えている。
また、Amazonの「Amazon Pay(旧Amazonログイン&ペイメント)」、楽天の「楽天ペイ(旧楽天ID決済)」、リクルートライフスタイルの「リクルートかんたん支払い」、ヤフーの「Yahoo!ウォレット」、LINE Payの「LINE Pay」といったID決済サービスを採用する企業も目立つ。
さらに、スマートフォンの普及によりモバイルからの購入が増加しているため、「キャリア決済」のさらなる利用拡大も期待されている。また、昨今では越境ECに注目が集まっており、多通貨決済(MCP:Multi Currency Pricing)や現地での決済サービス提供を支援している企業もある。
モバイルを活用した新たな展開も目立つ。2016年は銀行口座と連携したサービスが注目を浴びた。まず、ヤフーの「預金払い」は、銀行などの預金残高を利用して“手数料無料”で支払いができるのが特徴だ。対象の口座を「Yahoo!ウォレット」に登録すると「ヤフオク!」「Yahoo!ショッピング」「LOHACO(ロハコ)」での買い物において利用できる。また、「Yahoo!マネー」は、「受け取る」「支払う」「送る」機能が利用できる。
さらに、LINE Payでは、銀行口座振替・コンビニエンスストア・Pay-easy(ペイジー)での支払いを通じた事前チャージ、もしくはクレジットカードでの支払い登録をすることにより、サービスが利用可能だ。「送金」機能を有しており、LINEでつながっている友人に送金ができる。LINEでつながっていれば、相手の銀行口座を知らなくても、メッセージやスタンプなどを添えてお金を送ることが可能だ。LINE Pay上から、送金する相手を選択し、支払金額、およびメッセージを入力するだけで、相手のLINE Pay口座に支払金額が入金される。