吉原商店街

2017年4月24日8:30

ブロックチェーン技術を用いた地域活性化の実証実験
スマートフォンのWalletアプリに配信されるポイント型クーポン「NeCoban」

静岡県富士市の吉原(よしわら)商店街振興組合は、静岡銀行、マネックスグループ、Sound-F、ご当地グルメ「つけナポリタン」プロジェクトチームの富士つけナポリタン大志館、「B-1グランプリ」を運営する愛Bリーグ本部と協働し、ブロックチェーン技術を用いた地域活性化システム「NeCoban(ねこばん)」の実証実験に参画している。実際の消費活動の上で同技術を検証する国内初の事例として注目されている。

ブロックチェーン技術の活用可能性や課題を検証
一般消費者参加型のブロックチェーン活用事例で国内初

JR富士駅前とともに、静岡県富士市の中心市街地の1つである吉原商店街。竹取物語発祥の地ともいわれ、江戸後期には東海道の宿場町として栄えた歴史ある町だ。現在でも、ご当地グルメ「つけナポリタン」の元祖など人気店があり、県内における知名度も高い。

左から吉原商店街振興組合 理事長 内藤勝則氏、内藤金物店の 内藤佑樹氏

集客の中核だった食品スーパーマーケットが1994年に撤退し、モータリゼーションの進展などによる大型商業施設の郊外化が進んだこともあり、残念ながら往時の賑わいは薄れた。「30~40年位前までは1日約1万人の交通量があり、富士・吉原地区で最も賑やかでしたが、今は1,000人を切っています」と、吉原商店街振興組合 理事長 内藤勝則氏は現状を明かす。

同商店街は2016年9月から、ブロックチェーン技術を活用した流通・管理システム「NeCoban」の実証実験への試みに参画。実験は、Walletアプリに配信されるポイント流通における、地域経済活性化への貢献の検証が狙いだ。大型店がなく、実証実験に適した規模ということもあり白羽の矢が立ったという。

内藤理事長の息子で金物店を営む内藤佑樹氏は「使っていて直接的にはわからないが、ブロックチェーンというFinTechで注目される革新的な技術を活用していることで、商店街の名前が多くのメディアに取り上げていただけたことが大きなメリットです」と語る。大手地銀の一角である静岡銀行は地元での信頼度が群を抜き、同行の地域活性化への取り組みであるという点も関心を集めている。

実証実験は商店街の歳末セールに合わせて2016年12月に開始。約30店舗が参加し、期間は今年2月末頃までを予定している。「商店街の若旦那衆などが、システム開発会社のSound-F様と意見交換を積極的に行ってきました。開始後も仮想通貨の表示の仕様など、アプリの使いにくい部分の変更を随時お願いしています」と内藤佑樹氏は説明する。

内藤金物店での「NeCoban」の告知

商店街全体なら100件に上るクーポンを提示可能
スマホで容易、即時性も備えた大型店に負けない施策

これまで商店街の販促は紙媒体が主だった。内藤勝則理事長は「スマホさえあれば簡単にクーポンが出せるのが魅力です。20~30店舗あれば100件くらいの、大型店に負けない独自サービスを提示できます」と期待する。クーポンは雨天など客足の少ない時間帯に、臨機応変に仕掛けることも可能だ。

Kamileon Cafe 58での利用イメージ

内藤佑樹氏は「ブロックチェーン技術が使われていることはアプリ上はお客様には関係がなく、純粋に便利にお使いいただいています。また、当店のお客様が、アプリに一緒に表示された他店のクーポンも気にされるなど、買い回りも期待できます」と、相互送客の可能性も感じている。クーポンの使用に至るにはクーポン自体の魅力が不可欠で、その強化も今後の課題だ。

2月に富士市で開催された「2017東海・北陸B-1グランプリ」でも、来場者へ「NeCoban」の周知を図ったという。なお、今回は実証実験のため各店舗に費用負担は発生しないが、ビジネス展開される際には利用手数料を徴収しシステムコストなどを賄うことが想定される。

ところで、同商店街には20余年前から、買い物額に応じポイントがつく「吉原ポイントカード」がある。今や見慣れたサーマルカードだが、「当初は大型店があまりポイントを始めていなかったのでお客様に説明が大変でしたが、今はほぼ必要ありません。『NeCoban』にもそんな時代が来るかもしれませんね」と内藤氏は笑う。ランニングコストが抑えられる今回のような新技術も、併せて集客のフックにできればと考えている。

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