北海道函館市(函館市電)

交通系ICカード「ICAS nimoca」で市電とバスの乗り継ぎも柔軟に
函館で九州を基盤とする「nimoca」のシステムを採用

北海道函館市の函館市電では、函館バスとともに、西日本鉄道/ ニモカが展開する交通系IC カード「nimoca(ニモカ)」のシステムを2017 年3 月25 日から採用している。nimoca は九州各地では運用の実績はあったが、函館という遠く離れた地域での初の採用となった。

費用面や機能を重視してnimoca採用
導入後は安定した運用を実現

函館市企業局は、市電と函館バスで導入する交通系ICカードシステムの業務委託先に、ニモカ、西日本鉄道、西鉄エム・テック、西鉄情報システムの4者からなる「にしてつグループ交通系ICカードシステム導入業務連合体」を選定した。市企業局と函館バスが2016年1月に募集を開始したプロポーザルには2者の参加があり、3月22日の審査委員会で選定された。入札の条件は、全国10の全国相互利用先での交通利用が可能、もしくは相互利用先での片利用が可能な点を挙げていた。

函館市企業局 交通部 事業課 主査 今野慎太郎氏

これまで函館市電では、現金での支払いに加え、磁気カードを導入していたが、乗務員の運行負荷があり、利用者の利便性でも課題があった。「nimoca」は、西日本鉄道に加え、熊本市電、大分交通、宮崎交通、佐賀市営バスといった鉄道会社、バス会社が採用する交通系ICカードだ。函館市企業局 交通部 事業課 主査 今野慎太郎氏は、「費用面でも機能面でも希望する仕組みとなりました。函館バスとの乗り継ぎが柔軟にできるのが、nimocaの特徴としてよかったです」と説明する。函館市電や函館バスには、改札機がなく、車内で精算を行っている。距離に応じて料金も変動し、電車から電車、バスから電車、電車からバスなどで割引が適用される独自の乗り継ぎ割引制度も対応できたのが特徴だった。さらに、ICカードにより、乗降データを取得して、時間帯によって利用者が多い、少ないといった数値を取得できるなど、磁気にはない特徴を有している。

nimocaのサーバは福岡で管理されているが、導入前は試験を行い、問題なく運用できることが確認できた。また、導入後もトラブルは発生していない。

函館オリジナルの「ICAS nimoca」
乗継割引やポイント付与を実施

函館市電と函館バスでは、交通系ICカード「ICAS nimoca」(イカすニモカ)を発行してサービスを展開。磁気カード(イカすカード)で馴染みのあった名称を継承して採用している。「ICAS」は「Intelligent Card System」の略であり、函館市の渡島半島をイメージした空白に「ICAS nimoca」と表記したオリジナルデザインとなっている。通常のカードのほかにも、小児用、障害者用、窓口での会員登録が必要な「スターICAS nimoca」などがある。カードへの入金(チャージ)は、電車やバス、チャージ機に加え、街中のコンビニエンスストアで行える。

「ICAS nimoca」。函館市電・函館バスで使用するとポイントが貯まり、「乗継割引」も利用できる

また、提携するクレジットカード会社や銀行が発行のクレジットカードを利用することも可能だ。クレジットカード利用者からは、オートチャージができることが喜ばれている。

利用者は、市電やバスを乗り継ぐ場合、乗継ぎ時間が60分以内で、乗車料金が最大160円割引される。また、「ICAS nimoca」で函館市電・函館バスの運賃を支払うと、3%相当の「nimoca」ポイントが付与される。さらに、貯まったポイントは1ポイント=1円として入金金額に交換可能だ。

導入後は、高齢者にスムーズに受け入れられるかが懸念だったが、4月1日から精神障がい者の市電・函館バス交通料金助成制度が「スターICAS nimoca」を用いた制度に変更。これにより、函館市内在住で精神障害者保健福祉手帳(1~3級)を持つ人は、「スターICAS nimoca」を利用して市電・函館バスに乗車すると、乗車料金が乗車日の翌々日にポイントとして付与されるようになった。

現状、函館市電利用者のうち、約半数が交通系ICカードの利用となっている(相互利用する交通系ICカードを含む)。函館は観光の街であり、国内外から数多くの人が訪れるため、函館市電では、市民の利用に加え、約半数が観光利用となっている。観光利用者は1日乗車券を購入するケースも多いが、nimocaと相互利用するSuicaなどの交通系ICカードが利用できることは、利便性向上の意味でも大きい。

カードの普及は順調に進む
今後はデータ分析も視野に

函館市電の「ICAS nimoca」カードの発行枚数は、2018年11月で約1万7,000枚。函館バスでは、4万枚を超えており、合わせると6万枚近くのカードが発行されている。普及は順調に進んでいるが、さらなる訴求を行うことで、その比率をさらに高めていきたいとした。なお、サービス開始時には、北海道新聞で特集記事を掲載するなど、告知に努めた。

今野氏は、「今後は、この時間帯に利用者が多いのでダイヤを厚くするなど、データ分析・活用につなげられるといいです。九州から離れた函館で、nimocaを導入したことで、いろいろな都市から照会もいただいており、モデルケースとなっています」と成果を語った。街中での加盟店開拓は、ニモカが実施しているが、さらに函館での加盟店が増えれば、より利便性が高まると期待している。

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