国内で年々拡大するクレジット、 デビット、プリペイドの状況は?

2021年3月9日

新型コロナウィルス感染対策として 「非対面」「非接触」に注目

国内でも「クレジット(後払い)」、「デビット(即時払い)」、「プリペイド(前払い)」の支払い手段は年々拡大している。2020年は、新型コロナウィルス(COVID-19)感染拡大により、リアル店舗ではインバウンドを含めた消費が大きく落ち込んだが、感染対策として「非接触」「非対面」を実現可能なキャッシュレスが注目を浴びた1年だったと言える。本章では、国内におけるキャッシュレスの現状と注目点について紹介する。

「キャッシュレス・消費者還元事業」で加速
QRコード決済が近年台頭

2019年10月~2020年6月まで行われた「キャッシュレス・消費者還元事業」、2020年9月~2021年9月(当初の2021年3月末までから延長)まで実施されている「マイナポイント事業」など、国民の関心をキャッシュレスに向かわせる取り組みが日本でも行われている。実際、「キャッシュレス・消費者還元事業」により、「キャッシュレス決済を導入する加盟店の拡大、消費者の利用の後押しによるトランザクションの増加につながり、キャッシュレス化拡大に結び付いた」と考える識者も多い。

民間最終消費支出に占めるキャッシュレス比率も年々高まり、2019年は26.8%まで上昇している。伸び率は16年から17年が1.3%、17年から18年が2.8%となり、18年から19年は2.7%の伸びとなった。経済産業省の「キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会」の資料によると、2018年のキャッシュレス推進ではクレジットカードの利用拡大による貢献が大きかったが、2019年は、クレジットカードはもちろん、デビットカード、電子マネー、QRコード決済が伸び、「特にQRコード決済の伸びが大きかった」と評価している。

図 国内のキャッシュレス比率(「キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会」資料より)

図に示した「キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会」資料のキャッシュレス決済比率の内訳の推移のうち、クレジットカードについては、(一社)日本クレジット協会(JCA)による、2012年までは加盟クレジット会社へのアンケート調査結果を基にした推計値、2013年以降は指定信用情報機関に登録されている実数値を使用している。デビットカードは、2015年までは日本デビットカード推進協議会によるもの、2016年以降は日本銀行「決済システムレポート」・「決済動向」を用いている。電子マネー支払いは、「決済動向」を参考にしたという。2018年の数値から加わったQRコード決済は(一社)キャッシュレス推進協議会の「コード決済利用動向調査」を用いているそうだ。それによると、2019年のキャッシュレス決済比率の内訳は、クレジットが24.0%、デビットが0.56%、電子マネーが1.9%、QRコード決済が0.31%となっている。まだまだクレジットカード決済がキャッシュレスの中心であることは間違いないが、各決済手段とも成長は続いているといえるだろう。

ペイメントカードの支払い方法では、「クレジット(後払い)」、「デビット(即時払い)」、「プリペイド(前払い)」の3つの形態に分けられる。このうちQRコード決済は、チャージして電子マネーのように支払うケース、クレジットカードと紐づけるケース、口座直結により銀行口座の残高の範囲内で支払うケースが混在している。また、電子マネーのチャージは、クレジットカードから紐づけで行われている場合も多い。実際、楽天やイオン、セブン&アイ・ホールディングスのように、複数の支払い手段を合わせて提供することで、顧客に価値を提供している企業もある。さらに、スーパーマーケットなどでは、サーバ管理型のプリペイドカードを自社電子マネーとして導入し、顧客の囲い込みに利用するケースも目立つ。今後は、非接触を中心とした電子マネー、QRコード決済といったような枠組みではなく、3つの支払い手段をより細かく分析した決済データの登場に期待したい。

「非対面」「非接触」がキーワードに
リアルとネットの連携も加速

2020年のキャッシュレスのトピックスとして、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大の影響が挙げられる。当初予定されていた東京五輪・パラリンピックが2021年に延期になり、観光客の激減でインバウンド消費が見込めなくなった。観光地の店舗や百貨店などへの影響は大きなものとなっている。また、(一社)日本フードサービス協会による2020年の外食産業市場動向によると、外食産業の全体の売上前年比は84.9%と15.1%減となり、1994年に調査を開始して以来最大の下げ幅となっている。特に、ファミリーレストラン、喫茶、ディナーレストラン、パブレストラン/居酒屋などは軒並み大きなダメージとなった。テイクアウト・デリバリー需要に支えられたファストフードは96.3%と落ち込みを抑えることができたが、多くの業態で影響を受けていることが伺える。

コロナ禍で「非対面」、「非接触」というキーワードが浮上する中、他人との接触を避ける目的でキャッシュレス決済が注目を浴びた1年でもあった。(一社)全国スーパーマーケット協会の調査によると、「スーパーマーケットでキャッシュレス決済を利用する理由」として、「コロナ禍で安全・安心だと思うから」が19%を占めた。また、スーパーマーケットでの支払いに利用する決済手段として、感染拡大前は44.3%だった現金が感染拡大後の2021年1月は31.5%まで減少している。スーパーマーケット以外の業界でも「非対面」や「非接触」が可能になるキャッシュレス化を後押しする動きが目立つ。

非接触技術として、モバイル決済の「Google Pay」や「Apple Pay」、各種QRコードに加え、国際ブランドもクレジットカードやデビットカードを端末にかざすだけで支払いが可能な「EMVコンタクトレス(タッチ決済)」機能を推進している。

また、コロナ禍でオンラインとオフラインの融合が注目を浴びた。特に、コロナ禍で大きなダメージを受けた飲食業界では、クレジットカードなどによりネットで商品を注文し、店舗では現金の受け渡しなく飲食が可能な「モバイルオーダー」サービスを導入する企業が増えている。

例えば、スターバックス コーヒー ジャパンは、非接触サービスの需要拡大を受け、2020年12月から、事前に注文・決済を行い、レジに並ばずに商品を受け取ることが可能な「Mobile Order & Pay(モバイルオーダー&ペイ)」を全国の店舗に拡大している。日本マクドナルドでは、「未来型店舗体験」の取り組みの一環として、スマートフォンから事前注文&キャッシュレス決済ができる「モバイルオーダー」を、各店舗に導入している。モバイルで注文した商品を店舗で受け取ることに加え、注文した商品を店舗の駐車場で受け取る「パーク&ゴー」など、コロナ禍で店員との接触を減らす取り組みを行っている。

事前注文決済サービス「モバイルオーダー&ペイ」に全国直営のスターバックスで対応。新たな生活様式における非接触支払い等のニーズの高まりを受け、計画を早め全国の店舗へ導入(出典:スターバックスコーヒージャパン)

モバイルオーダーと連携して、顧客が店員とのやり取りを避けることができる非接触レジ、商品を受け取るためのロッカーなども登場。また、飲食店ではテーブルでの注文を自身のモバイルフォンで行い、飲食後はネット決済で会計を行うサービスも登場するなど、キャッシュレスシステムが果たす役割はますます重要となりそうだ。

スーパーマーケットでは、顧客のスマートフォン、店舗に設置した専用端末で商品登録から決済までを行う仕組みが登場している。これにより、顧客は会計時にレジに並ぶことなく、スムーズな買い物が可能となる。アプリをダウンロードしてもらうといった障壁はあるが、販促への活用も含め、導入するスーパーマーケットは増加すると思われる。さらに、トライアルのレジカートシステムでは、プリペイドカードとの連携により、通常のレジを通らずに、会計まで可能となっている。スマートフォンやレジカートの活用により、店員との接触防止に加え、販促サービスへの有効活用につなげることも可能だ。

イオンリテールは、利用者自身が貸出用の専用スマートフォンで商品のバーコードをスキャンし、専用レジで会計する「どこでもレジ レジゴー」を展開(出典:イオンリテール)

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